3 争点(3)について
(1) 乙3によれば、被告の顧客管理に関するデータには、原告X3については平成元年3月22日に30万円の貸付がなされた形になっていることが認められるが、他方、甲9によれば、原告X3の認識としては、同日に被告から30万円の貸付を受けたわけではなく、昭和63年5月に10万円の貸付を受けたのを皮切りに被告との取引を続けた結果、平成元年3月22日の時点で借入金残額が30万円になったというであることが認められる。
(2) そして、甲8と乙3との証拠評価については、争点(2)について判断したところと同様に判断すべきであり、その結果、原告X3に対する平成元年3月22日における30万円の貸付の事実も、あるいはまた同日における原告X3の30万円の債務負担の効果も、算入することはできない。
4 争点(4)について
(1) 被告は貸金業者であって、みなし弁済については貸金業法に定める要件を満たさない限りそれが認められないことは熟知していたことは明らかといえる。しかしながら、その一事をもって、被告が悪意であったと認定することはできない。
しかしながら、甲14、16ないし44によれば、被告は遅くとも平成10年10月には顧客から過払金返還請求を受け出していたことが認められるのであり、かような状況に至れば、顧客からの過払金返還請求や、弁護士による債務整理の受任通知を受けていなくとも、あらゆる顧客についてみなし弁済の要件が具備されていない可能性を少なくとも漠然と認識していたというべきであるから、被告において、原告3名に関しみなし弁済の要件が具備されていたと認識していた可能性について特段の事情があれば格別、本件全証拠を総合してもそのような事情がうかがわれない以上は、被告は、原告3名の不当利得について、遅くとも平成8年10月ころには未必的に悪意であったと認めるのが相当である。
(2) 別紙4ないし6において過払金が発生している期間内における「利息」(通常の利息とは異なる性質を有するところの、民法704条にいう「利息」)の加算がなされていないのは、被告が自らを悪意の利得者であると認めていないことに基づくと考えられるが、前記認定によれば、原告らが別紙1ないし3で主張している取引期間内において原告らの債務が負の数になった期間(すなわち過払いが生じた期間)においては、いずれも年5分の割合による「利息」が被告の原告らに対する不当利得返還債務に加算されることになる。
5 争点(5)について
乙1の冒頭にある昭和63年8月2日の95万1277円の貸付の記載は、その金額が「○万円」又は「○千円」という俗に言う「きりのよい」金額でないことに照らすと、原告X1と被告との間の取引が完全に終了した後に新たな貸付がなされたものではなく、むしろその時点で借換えがなされたか、又は、従前の取引における残額を新たな貸付の形で記載したにすぎないかのいずれかであると考えるのが相当であり、原告X1及び被告間の取引が昭和63年8月2日にいったん終了したとの事実を認めることはできない。したがって、被告が主張するところの、同日を起算日とする消滅時効は、認められない。
6 争点(6)について
(1) 金銭消費貸借契約における利息の計算は、契約成立日(初日)を算入すべきものであるが(最判昭和33年6月6日民集12巻9号1373頁)、原告ら及び被告とも、初日不算入の計算方法を用いているので、本件では、当事者双方でそのような計算方法を用いることにつき争いがないものとして扱う(ただし、悪意の不当利得における「利息」は、消費貸借契約に基づくものではないから、もともと初日不算入とするのが相当である。)。
(2) うるう年の利息計算については、契約書に従い年365日の日割計算とすることも考えられるが、不当利得における「利息」はあくまで法定要件に従って発生する債権であって約定になじまないことに照らせば、当該期間において2月29日を挟んでいる場合には1年を366日、その他の場合にはうるう年か否かにかかわらず1年を365日として計算するのが相当である。
(3) なお、原告X1に関する昭和63年8月2日の95万1277円の借受については、争点(2)及び(3)に関して原告X2及び原告X3について判断したところと同様、そもそもこの金額がみなし弁済の要件が備わっていることを前提とする金額である可能性が高いため、それを原告X1の損失額かつ被告の利得額から控除して差し支えないかどうかの問題はあるが、そもそも原告X1の側でそれを控除した額を主張している以上、裁判所の側で、控除をせずに主張金額を上回る損失額かつ利得額を認定することはできない。
(4) ところで、原告X3については、残元金額が0円を上回る期間があり、この間における利息割合をどうすべきかが問題となるが、基本的には当初の貸付額を基準にして利息制限法所定の制限割合に従うべきものといえるところ、本件のように、一連の貸付の一部しか主張されておらず、しかも、主張の当初の部分が既に負の数になっているような場合には、残元金額の最も多額になっている値を基準にするのが相当であり、これによれば、原告X3について残元金額が最も多額となっている期間においても10万円未満であることから、その期間については、年2割として計算する。
(5) 前記認定に従って原告3名の取引に基づく不当利得返還請求額を計算すると、原告X1については別紙7、原告X2については別紙8、原告X3については別紙9のとおりとなり、原告X1については請求金額を下回っているが、その余の原告はいずれも請求金額を上回っている。
7 結論
以上によれば、原告X1の請求は、残元金を572万1009円、未精算利息を108万7608円とする限度(すなわち680万8617円及び内572万1009円に対する平成13年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度)で理由があり、その余の原告らの請求は、すべて理由がある。
訴訟費用については、原告X1は一部敗訴しているが、その割合が僅少であることに照らすと、民事訴訟法64条ただし書により原告X1との関係においても全部被告の負担とするのが相当である。
(裁判官 柴崎哲夫)
別紙1~9 〈省略〉


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