◆ 平成16年10月28日 東京地裁 平15(ワ)22987号
原告 X
訴訟代理人弁護士 ●●
被告 株式会社エイワ
代表者代表取締役 ●●
訴訟代理人弁護士 ●●
同 ●●
主 文
1 被告は、原告に対し、金30万1359円及び内金29万8155円に対する平成14年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)所定の貸金業者である被告から15回にわたって継続的な貸付けを受けた原告が、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、利息制限法による再計算後の過払金及び悪意受益者の利息金の支払を求めたところ、被告が貸金業法第43条のみなし弁済規定の適用を主張して過払金の発生を争っているという事案である。
その中心的な争点は、次の(1)から(5)までのとおりである。
(1) 貸金業法17条の契約書面交付の要件遵守の有無
ア 借主の記載の有無
イ 契約書面に引用された償還表の交付の要否、有無
ウ 貸金業法施行規則改正前の借換え時における旧債務の元利金の記載の要否・借換え時における旧債務の利息の支払(現実の金銭授受)の有無
エ 運転免許証及び保険証の各写しを受領した事実の記載の要否
オ 債権譲渡時の貸主の記載の適否
カ 債権譲渡後の旧債務の記載の適否
キ 債権譲渡時の「債権譲受日」、「債権譲受額」の記載の適否
ク 契約書面の一通性の要否・契約内容を補完する書面(借入マスター契約書)の交付の有無
(2) 貸金業法18条の受取証書交付の要件遵守の有無
ア 受取証書の交付の有無
イ 受領文言の記載の適否
ウ 債権者の表示の記載の適否(代理受領文言の記載の要否)
エ 受領額の記載の適否(借換え時の現実の利息授受の有無)
オ 一度みなし弁済の要件を欠いた後にそのみなし弁済を前提とした後の受取証書の18条書面の該当可能性の有無
(3) 超過利息支払の「任意性」の有無
(4) 15回の取引の一個性の有無(過払金の後の新規貸付金への充当の可否)
(5) 被告が過払金について悪意受益者か否か
1 (当事者間に争いがない前提事実)
(1) 原告が登録された貸金業者であること
被告は、関東財務局長(7)00154号の貸金業法第3条1項所定の登録を受けて貸金業を営む者である。
(2) 本件各貸付けと返済
被告は、原告に対し、別紙「原告計算表」記載の「年月日」欄記載のとおり平成6年12月28日から平成14年4月11日にかけて、15回にわたって「借入金額」欄記載の各金員(名目額)を貸し付け、「弁済額」欄記載のとおり平成7年1月18日から平成14年7月10日まで101回にわたって返済を受けた(以下、上記の各貸付けを「本件各貸付け」という。また、個別の貸付けを古いものから順に「本件第1貸付け」のようにいう。さらに、上記各返済を「本件各返済」という。)。
2 (原告の主張の骨子)
本件各貸付け及び各返済を利息制限法により引き直し計算すると、別紙「原告計算表」計算書のとおり過払金29万8155円が発生する。
よって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、過払金29万8155円及びこれに対する最終返済日までの悪意受益者の確定利息金3204円の合計30万1359円及び内過払元金部分29万8155円に対する平成14年7月11日(最終返済日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による悪意受益者の利息金の支払を求める。
3 (被告の主張の骨子)
利息制限法による制限利率の超過部分についても、貸金業法第43条のみなし弁済が成立するので、すべて有効な利息の返済とみなされる。
よって、原告主張の過払金は、発生しない。
4 みなし弁済等に関する各個別争点に関する原告と被告の主張の対比
(1) 契約書面(貸金業法17条の書面)の交付について
ア 借主の記載の有無について
(ア) 原告の主張
乙第2号証の15を除くすべての契約書面(17条書面)において、借主の記載を欠く。被告の複写式の書式に関する後記主張は単なる主張にすぎず、実際にそのような扱いをしたことについての証明がない。
(イ) 被告の主張
被告は、本件各貸付けの際、貸金業法43条1項1号に基づき、同法17条1項各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面(以下「17条書面」という。)を相手方である原告に対し交付したが(乙2の1から15まで)、17条書面の書式は3枚複写式になっており、1枚目が借用証書正本、2枚目が貸企業の規制等に関する法律施行規則(以下、単に「施行規則」という。)16条3項に基づく書面、3枚目が借主に交付する借主用控えである。1枚目の借用証書正本は、被告が貸付けの証拠として貸付時から貸金の完済時まで保持し、貸金の完済時に借主に返還するものである。2枚目の上記施行規則16条3項に基づく書面は、当該貸金が完済になった後も、被告が商法上及び貸金業法上の帳簿保存義務に基づき、保存する書面である。3枚目の借主用控えは、貸金業法17条に基づき、貸付時に「契約の内容を明らかにする書面」として借主に交付するものである。被告保管の上記施行規則16条3項に基づく書面(乙第2の1から15まで)の借主欄に借主の署名が記載されていないのは、2枚目には借主欄の記載が複写されないようになっているためであって、1枚目の借用証書正本の借主欄には筆記具により借主の署名がされている。被告保管の上記施行規則16条3項に基づく書面(複写式の2枚目。乙2の1ないし14まで)の借主欄にペン圧による借主名の痕跡が残っていることは、平成16年7月9日の期日において、裁判所、原告代理人及び被告代理人の三者で確認した。
したがって、3枚目の借主用控え(黄色・17条書面)にも、貸金業法17条の要件としての借主の署名が複写されるようになっていたことが明らかであるから、「借主」の記載を欠く旨の原告の主張は理由がない。
イ 償還表の交付の要否・有無について
(ア) 原告の主張
返済方法につき「別紙償還表記載のとおり」とあり(第1条〈4〉)、被告はこれを裏付けるものとして乙第21号証及び第22号証を提出したが、被告から提出のない分の契約手続については、実際は償還表を添付していないことが強く推認されるから、返済方法の記載を欠いている。
(イ) 被告の主張
a 貸金業法17条所定の「返済の方式」(第5号)、「返済期間及び返済回数」(第6号)はいずれも借用証書に記載されており(乙2の1ないし15・第1条)、借用証書のみで同法17条所定の要件を充たすものであるから、償還表の交付の有無は17条書面の成否とは無関係である。
b 被告は、原告に対し、各貸付時に、弁済予定日、弁済予定額及び各弁済の元本及び利息への充当額を記載した償還表を交付した(乙21、22)。被告における償還表の取扱いは、平成13年以前は2枚作成し、内1枚は貸付時に借主に交付し、もう1枚は完済時に借用証書とともに借主に返還しており、被告においてはコンピュータ保存していた。平成13年9月以降は3枚複写式で作成するようになったので、被告において書面が残存しているのは、乙第21号証及び第22号証の償還表のみである。平成13年9月以前も、被告が原告に交付した借用証書及び借主用控えに償還表を添付していた。
原告は、平成6年12月28日、平成7年6月1日、平成7年12月14日、平成8年6月10日、平成8年12月2日、平成9年6月2日、平成9年12月1日、平成10年6月1日、平成10年12月1日、平成11年6月1日、平成11年12月1日、平成12年10月18日、平成13年4月12日、平成13年10月12日、平成14年4月11日の15回にわたり、借入れの際、被告から借主用控えを受領した。このことは、乙第2号証の1から4までに「本証書の写しを正に受領しました」と、乙第2号証の5から11までに「本証書の写し及び償還表を正に受領しました」と、乙第2号証の12、14及び15には「本証書の写し、償還表及び借入マスター契約書の写しを正に受領しました」と、それぞれ記載され、その下に原告が署名をしていることから明らかである。
また、原告は、平成7年6月1日、平成7年12月14日、平成8年6月10日、平成8年12月2日、平成9年6月2日、平成9年12月1日、平成10年6月1日、平成10年12月1日、平成11年6月1日、平成11年12月1日、平成12年10月18日、平成13年4月12日、平成13年10月12日、平成14年4月11日の14回にわたり、被告から、完済になった従前の貸付けに関する借用証書の正本の返還を受けた。そのことは、乙第2号証の1から11までに「完済により、本日本借用証書の正本の返還を受け、受領しました」とあり、乙第2号証の12から14までに「本日本借用証書の正本の返還を受け、受領しました」とあり、これらの記載の下に原告の署名があることから明らかである。
c なお、原告は、被告から償還表の書証提出のあった平成13年10月12日及び平成14年4月11日の各貸付け以外の貸付けについては、償還表が交付されていないと主張するが、上記のとおり、乙第2号証の5から12、14及び15では、「償還表を受領しました」との記載の下に原告が署名を行っているから、被告が原告に対して償還表を交付したことは明らかである。
ウ 旧債務の元利金の記載の要否、借換え時の旧債務の利息の現実支払の有無について


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