第3 当裁判所の判断
1 支払督促決定がされた場合の給付請求訴訟、確認請求訴訟の適否
原告は、被告らに対する本件支払督促決定を得ているが、支払督促決定には、既判力がないから、被告らの請求異議の訴えの提起等でその効力が覆される危険があるので、既判力を有する民事訴訟上の給付請求をする訴えの利益があると解するのが相当である。
したがって、原告の主位的訴えは、適法である。
そうすると、原告には、その確認請求に係る予備的訴えを求める利益はないから、予備的訴えは違法であって、却下すべきものである。
なお、原告の請求間の関係を合理的に解釈すれば、主位的訴えについて本案裁判がされれば、それが棄却であっても、予備的訴えについての判断を求めないものとも解されるが、その点、記録上明確に確認されていないので、主位的請求について棄却である以上、予備的訴えについても判断した。
2 甲1の法17条1項該当性(法43条の適用関係)
(1) 甲1、甲5の1、2、原告代表者によると、次の事実が認められる。
ア 原告は、貸付時に被告らに甲1を交付したが、それには、「返済の方式並びに返済期間及び返済回数(法17条1項5号、6号)」として、次の記載がある。
「第一条一、元金弁済期限 平成15年1月31日
一、元金弁済方法・・・自由弁済(平成15年1月31日を最終弁済期としてその間債務者は随意に元金の内入弁済をすることができる。)
一、利息は年40.004パーセント(但し年365日の日割り計算とする、うるう年の場合は年40.1136パーセント)と定め、平成10年2月28日を初回とし、以後、毎月末日限りその元金(残元金)の経過日数分(当期日分)を支払うこと。
・・・
一、ただし支払当日が土、日、祝日の場合はその前日限りとする。」
イ 更に、原告は、貸付時に、被告らに償還計算書(甲5の1、2)を交付したが、それには、平成10年2月から平成15年1月まで、各月末日(但し、該当日が土曜日、日曜日であっても、該当日どおり)に、約定の利率で計算した経過利息のみを弁済した場合の弁済額の記載があった。
ウ 甲1には、貸金業者である原告の商号及び住所地(法17条1項1号)、本件貸付の契約年月日(同項2号)、本件貸付の金額(同項3号)、賠償額の予定(同項7号)、その他内閣府令で定める事項(同項9号)、即ち、貸金業者の登録番号、契約の相手方の商号、名称又は氏名及び住所、契約の相手方の借入金返済能力に関する情報を信用情報機関に登録するので、その旨及びその内容、利息の計算の方法、期限の利益の喪失の定めがあるときは、その旨及びその内容、保証人の商号、名称又は氏名及び内容の記載がある。
(2) そうすると、被告Cに交付された甲1には、法17条1項5号は「返済の方式」、6号は「返済期間及び返済回数」、9号、施行規則13条1項チは「各回の返済期日及び返済金額」の点を除く法17条1項の各要件は概ね充たす。
そこで、下記(3)で、法17条1項5号、6号、9号、施行規則13条1項チの各要件を充たすかを検討する。
(3) 原告の採用する弁済期、弁済方式は、〈1〉債務者である被告らは、利息について、毎月末日(但し支払当日が土、日、祝日の場合はその前日限りとする。)に、元本50万円に対する経過日数分の弁済義務を負い、元本50万円については、平成15年1月31日に全額の弁済義務を負うが、〈2〉債務者である被告らの任意の意思に基づき、元本の内入弁済をすることができ、その場合には、貸金業者である原告は、〈1〉の約定上は支払を受け得る平成15年1月31日までの利息のうち、元金が支払われた以降の利息について、債務者である被告らの支払債務を免除するという、債務者である被告らに有利な特約をしたものと同内容である。したがって、最低限支払うべき法的義務のある債務としての弁済期、弁済方式は、一義的に定まっている。
そうすると、そのような返済の方式、返済期間及び返済回数を採用することのみから、当然、法17条1項5号、6号に反するものとも言い難い。
しかし、そのような返済の方式、返済期間及び返済回数を採用する以上、貸付時に債務者である被告らに交付する書面においては、返済期日及び返済金額について、一義的に明確な記載がなされるべきであって、貸付時に複数の書面が交付された場合に、その内容に齟齬がある場合には、法17条1項5号、6号、9号、施行規則13条1項チに反するというべく、法17条1項に該当する適法な書面とはいえない。
これを、本件に当てはめると、甲1と甲5の1、2の記載では、各月末日が土曜日、日曜日に当たる場合について、返済日に齟齬があることになるから、それは、法17条1項5号、6号、9号、施行規則13条1項チに反するというべく、法17条1項に該当する適法な書面とはいえない。
(4) そうすると、その余の点について判断するまでもなく、被告Cの弁済について、法43条の適用はない。
(5) このように、被告Cの弁済について、法43条の適用はないが、後記4で詳述するように、不当利得の悪意を判断するに当たっては、どの程度、法43条の各要件が充たされていたか、あるいは、貸金業者においてそれが充たされていたと判断していたかが重要な要素になると解されるので、以下、他の要件についても、検討する。
3 甲8の1ないし43(受取証書兼残高確認書)の法18条1項該当性及び同各書面の交付の有無(法43条の適用関係)
甲8の1ないし43、甲15、原告代表者によると、原告は、債務者から、銀行振込による弁済を受ける毎に、入金日頃に、受取証書兼残高確認書を2通作成し、その一通を保管し、他の一通を債務者に送付していたこと、その受取証書兼残高確認書には、貸金業者である原告の商号及び住所(法18条1項1号)、契約年月日(同項2号)、貸付の金額(同項3)、受領金額及び法43条の適用があった場合のその利息、賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額(同項4号)、受領年月日(同項5号)、その他内閣府令で定める事項(同項6号)、即ち、弁済を受けた旨を示す文字、貸金業者の登録番号、債務者の商号、名称又は指名、法43条の適用があった場合の当該弁済後の残存債務の額の記載があること、被告Cにも、同様の手続をとったことが認められる。
なお、被告C本人の供述、その陳述書である乙2には、その送付がなかった旨の部分があるが、原告は送付したとする受取証書兼残高確認書の控えが保存し、本件で証拠として提出されていること(甲8の1ないし43)を考慮すると、甲15、原告代表者に照らし、上記被告C本人の供述、乙2の該当部分を採用することはできない。
したがって、被告Cは、弁済の際に、直ちに、法43条の適用があった場合に副った内容の法18条1項に該当する書面の交付を受けたと認められる。
4 支払の任意性(法43条の適用関係)
甲15、乙2、原告代表者、被告本人によると、被告Cは、法43条の適用があった場合に副った充当関係が記載された18条1項の書面が交付された後に、本件各弁済を銀行振込で続けていること、その際、特に原告側から強要等されていないことが認められる。
そうすると、原告は、形式上は、任意な支払をしていたと認められる。
5 支払遅延の効果の免責等の有無
前記認定のとおり、本件各弁済には、法43条の適用がないので、本件各支払期日に支払うべき経過利息額は、利息制限法で引き直したものとなるべきところ、それを前提とすると、被告らには支払遅延はない。
よって、支払遅延の効果の免責は問題とならない。
6 充当計算
上記2ないし5の判断を前提とすると、利息制限法に従って充当されるべきであるから、被告Cは、原告に対し、平成13年9月13日の時点で、18万6861円の不当利得返還請求権を有することになる。
7 不当利得に対する原告の悪意の有無
(1) そもそも、法43条は利息制限法の例外規定であって、かつ、法43条1項の要件については、貸金業者に主張、立証責任がある。
また、本来、法43条の適用の有無は最終的には将来的な裁判所の判断によって定まるものであるから、貸金業者において、どのような見解を採用しても法43条1項の要件を充たし、かつ、その立証ができる場合としか考えられないシステムを採用している場合以外においては、当然、最終的に法43条の適用がない危険も想定すべきであるし、現に、通常の一般人であれば想定するものと解される。
これらの点を総合すると、貸金業者が利息制限法の適用がないことについて悪意である場合には、不当利得に関する悪意が推認されるというべきであって、その悪意の推認は、貸金業者において、法43条1項の要件を、すべて主張・立証できると判断し、かつ、そのように判断するに足りる事情がある場合に覆るものと解すべきである。
(2) これを前提に検討すると、本件においては、法43条の適用を否定すべき主な点は、法17条1項1項5号は「返済の方式」、6号は「返済期間及び返済回数」、9号、施行規則13条1項チは「各回の返済期日及び返済金額」の点についてであって、他の法17条の各要件は概ね充たし、法18条1項の要件や任意性の要件も、法43条の適用があったと判断していたとすると、充たすものであったこと、法17条1項の上記各号に該当しない理由も、その記載がまったくないということではなく、主に、その記載に齟齬があったというものであるから、原告が、その記載を法17条1項に該当すると判断したことを責めることも難しいこと、原告がそれらの書面の控を保管し、その立証に備えていたことに鑑みると、原告には、不当利得返還請求権が発生した当時、法43条の各要件を主張、立証できると判断し、かつ、そのように判断するに足りる事情があったと解すべきである。
そうすると、原告は、善意の受益者というべきであって、被告Cが原告に対して有する不当利得返還請求権元本に対する遅延損害金の起算点は、請求日である反訴状送達日の翌日である平成14年10月29日と解すべきである。
8 結語
よって、原告の、被告らに対する本訴主位的請求は理由がなく、本訴予備的訴えは違法であって、被告Cの原告に対する反訴請求は、主文第1項の限度で理由がある。
(裁判官 水野有子)
元利金充当計算書〈省略〉


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