(4) 旧レイクの債権債務は、営業譲渡によって当然には承継されず、被告は、営業譲渡の際、旧レイクの債務につき責めに任じない登記を経ている。
被告が店舗等を承継したからといって、契約上の地位を引き継いだことにはならない。そうでなければ免責の登記の効用が全く失われてしまうことになる。
被告は、本件営業譲渡前後から顧客に対し、文書、電話、ホームページ、ATMの画面等で新レイクが営業譲渡を受けたこと、旧レイクに対して借入金を弁済して精算してほしいこと、返済資金がなければ、新レイクが貸し付ける用意があること等を呼びかけた結果、大半の顧客が店頭に来店し、被告の担当者から改めて説明を聞き、新契約書を作成し、弁済の資金を被告から借り受けて旧レイクに対して完済した。原告の場合も同様である。このような手続を踏み顧客の納得を得ており、被告の主張が信義則に反することはない。
よって、仮に原告と旧レイクとの取引について、みなし弁済が認められず、過払になっていたとしても、それは被告には関係がない。
(5) 原告と旧レイクとの取引の利息を利息制限法に基づいて計算すると21万2609円の過払となる。
被告との取引では過払は生じておらず、却って、6万8866円の貸金残があるから、原告は被告にこれを支払うべきである。
なお、旧レイク社及び被告の両方を通算しても過払金額は35万2452円である。
(6) 仮に被告が不当利得返還債務を負うとしても、利息制限法による制限利息を超過する利息を受領しただけでは、悪意になるものではない。みなし弁済になるとの認識を有していれば悪意とはならない。原告は、被告が利息を受領するとき、みなし弁済になるとの認識を有していなかったことを主張立証すべきである。
(7) 不当利得返還債務の利率が年6分となることは争う。基本行為が商行為であっても、それから派生する不当利得返還請求権の消滅時効期間は10年であるとする最高裁判決の趣旨からすれば、利息は民法所定の年5分の割合によるべきである。
4 争点
(1) 貸金業規制法43条のみなし弁済の適用の有無
(2) 被告の原告に対する平成10年11月30日の47万9757円の貸付及びこれによる原告から旧レイク社に対する弁済が認められるか。
(3) 被告は悪意の受益者か。
(4) 本件不当利得返還債務の適用利率
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(みなし弁済の適用の有無)について
被告又は旧レイクが、原告に対する貸付の際、貸金業法17条所定の契約書面を交付した事実及び原告から弁済を受けた都度、同法18条所定の受取証書を原告に交付したことを認めるに足る証拠はないから、被告の貸金業法43条によるみなし弁済の主張を採用することはできない。
2 証拠によれば、被告及び株式会社レイク等の関係及び被告の商号の変遷は次のとおりである。
(1) 平成6年10月28日に設立されたゼネラルエレクトリックキャピタルコンシューマーローン株式会社が、平成10年8月27日、株式会社レイク(新レイク)に商号変更し、平成12年12月1日、ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社に商号変更した。(乙6)
上記会社は、平成10年11月2日営業の譲渡を受けたが、譲渡会社である株式会社レイクの債務については責に任じない旨の商号譲渡人の債務に関する免責登記を経ている。(乙6)
(2) 昭和25年8月30日に設立された株式会社レイク(旧レイク)は、平成10年11月2日に株式会社エルに商号変更し、平成15年3月31日株主総会の決議により解散した。(乙9)
(3) 平成14年2月18日に設立された有限会社オーシーは、平成14年12月1日、GEコンシューマー・クレジット有限会社に商号変更し、同月2日ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社を合併した。(乙7)
(4) 平成3年6月3日に設立されたゼネラル・エレクトリック・キャピタル・コンシューマー・ファイナンス株式会社は、平成15年10月1日、GEコンシューマー・ファイナンス株式会社に商号変更し、同日GEコンシューマー・クレジット有限会社を合併し、現在の被告となった。(乙8)
3 争点(2)について
(1) 被告は、平成10年11月30日に原告に47万9757円を貸付け、原告から旧レイクへの弁済手続を依頼されて、その手続を行った旨主張し、原告はこれを否認している。
被告は、平成10年11月頃から12月頃にかけて、旧レイクの顧客に対して、旧レイクが新レイクに営業譲渡をしたことに伴う契約書の書替えを依頼し来店を促す書面や契約切替申込書を送付していたこと、契約切替申込書の文面には、申込人が株式会社エル(旧レイク)からの借入債務にかかる約定利息を支払った場合に新レイクとの間で融資限度額設定基本契約書(カードローン)が発効する旨及び同基本契約書が発効した場合には、申込人の旧レイクからの借入金残元本と同額の融資が実施され、同融資額を旧レイクに対する借入金の返済に充てる旨の記載があることが認められる。(甲1、乙10、13)
そして、原告が被告(新レイク)との間で、平成10年11月30日、融資限度額設定基本契約書(乙1)により、融資限度額を50万円とするカードローン契約を締結したことが認められる。
しかし、上記契約の際、被告(新レイク)から原告に対し、旧レイクからの借入金残元本にあたる47万9757円の貸付けがなされたかどうか、原告が被告に同金員を旧レイクに返済することを依頼したかどうかについては、これを認めるに足る的確な証拠はない。
なお、旧レイクと被告の原告に対する取引履歴(乙4、5)によれば、平成10年11月30日に旧レイクの原告に対する貸付金元金47万9757円が完済となり、同日被告から原告に対し同額の貸付金が発生していることが認められるものの、これが旧レイクと被告との間での営業譲渡に伴う内部的な処理に止まらず、実際に原告に貸付がなされ、原告の有効な委託により旧レイクへの弁済がなされたことを認めるに足る証拠はない。
かえって原告の陳述書(甲2)によれば、原告が平成10年11月30日に、いつものようにレイク池袋支店へ返済に行った際、店舗の従業員から呼び止められ、新しく契約書を作成させられたが、なぜ新しい契約書が必要なのか理解できなかった旨の記載があり、原告が旧レイクから新レイクへの切替えについても十分理解していなかったことが窺える。
以上によれば、被告が平成10年11月30日に原告に47万9757円を貸付け、これを原告からの委託により旧レイクに返済した事実はいずれも認めることはできない。
(2) 被告は、旧レイクの債務を引き継がない旨主張しているが、本件においては、平成10年11月30日に原告が旧レイクに47万9757円を弁済した事実は認められず、被告は旧レイクから原告に対する貸金債権(利息制限法引き直し計算前の債権額47万9757円、同引き直し計算後の債権額26万0941円)が営業譲渡により引き継がれたものと解することができるから、上記被告の主張の当否は結論に影響しないこととなる。
4 争点(3)(悪意の不当利得者か否か。)について
被告は貸金業者であり、その業務において、貸金に関する法令に通じているとみられるから、利息制限法に引き直した金員の返還を要する点について悪意であると評価することが相当である。
被告は、被告が利息を受領するとき、みなし弁済になるとの認識を有していなかったことを原告において主張立証すべきであると主張するが、利息制限法所定の利息を超過する利息を受領する貸金業者については、事実上悪意の推定が及ぶものと考えられるから、上記主張は採用できない。
5 争点(4)(利息の適用利率)について
被告は商人であると認められ(商法52条)、貸金業者として貸金業を営むものであるから貸付行為及び利息の受取は商行為であると解せられる(商法503条)。
本件不当利得返還請求権は、被告がその営業上の貸付行為に基づき、約定の利息として受け取った金員が不当な利得と評価されるものであるから、被告にとって商行為に因りて生じた債務であると認められ、返還すべき利息(民法704条)の利率は商事法定利率の年6分とすることが相当である(商法514条)。
6 以上によれば、本件において法43条のみなし弁済規定の適用は認められず、被告は、利息制限法所定の利率を超える部分につき、法律上の原因なく利得していたことになるから、その超過分につき、別紙取引明細書のとおり充当計算をしたうえ、原告が弁済として過払いした金額について返還義務を負い、悪意の利得者として年6分の利息を付して返還義務を負うこととなる。
よって、原告の請求は理由があるから認容することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 野村高弘)
(別紙)取引明細書〈省略〉


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