◆ 平成16年12月21日 東京地裁 平15(ワ)5934号
原告 X
訴訟代理人弁護士 ●●
同 ●●
被告 (GEコンシューマー・クレジット有限会社訴訟承継人) GEコンシューマー・ファイナンス株式会社
代表者代表取締役 Y
訴訟代理人弁護士 ●●
主 文
1 被告は、原告に対し、150万円及びこれに対する平成14年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 原告の請求
主文と同じ。
第2 事案の概要
本件は、原告が、貸金業者である被告からの借入れについて弁済を続けた結果、利息制限法所定の制限利率に引き直して計算すると、既に借入元金を完済した上、これを超えた過払いがあるとして、被告に対し、不当利得(過払金163万3147円の内金である150万円)の返還を求めた事案である(主位的請求)。
また、原告は、仮に過払金が150万円に満たないとしても、取引記録を組織的に隠滅するという被告の不法行為により損害を被ったとして、被告に対し、過払金の返還請求(125万5972円ないしは59万8839円)と併せて、損害賠償(90万1161円)を求めた(予備的請求。請求合計額150万円)。
1 前提となる事実(争いのない事実及び証拠(乙5、7ないし9)により認められる事実)
(1) 被告の商号変更、営業譲渡等の経過の概要は、次のとおりである。
〈1〉 平成6年10月28日、ゼネラルエレクトリックキャピタルコンシューマーローン株式会社が設立された。
〈2〉 平成10年8月27日、前記〈1〉の会社は、株式会社レイク(以下「新レイク」という。)に商号変更した(この時点で、同一商号の会社が2社併存することになった。)。
〈3〉 同年11月2日、従前から存在した株式会社レイク(以下「旧レイク」という。)は、新レイクに営業譲渡(以下「本件営業譲渡」という。)し、旧レイクは、株式会社エルに商号変更した。
〈4〉 平成12年12月1日、新レイクは、ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社に商号変更した。
〈5〉 平成14年12月1日 前記〈2〉の株式会社は、GEコンシューマー・クレジット有限会社(訴訟被承継人)となった。
〈6〉 平成15年10月1日 〈5〉の有限会社は、ゼネラル・エレクトリック・キャピタル・コンシューマー・ファイナンス株式会社と合併し、GEコンシューマー・ファイナンス株式会社(被告)となった。
(2) 原告は、昭和57年ころから、旧レイクとの間で貸金取引があり、また、平成10年11月以降、新レイク及びジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社との間で貸金取引があった(以下、新レイク、ジー・イー・コンシューマー・クレジット株式会社、GEコンシューマー・クレジット有限会社及び被告を総称して「被告」ともいう。)。
2 争点
(1) 原告と被告との貸金取引(旧レイクとの貸金取引も含む。)における借入額及び返済額
(2) 原告と旧レイクとの間の貸金取引の債権債務が、旧レイクから被告への本件営業譲渡に伴って被告へ承継されたか否か。
(3) 原告の弁済が、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)43条に規定するいわゆるみなし弁済となるか否か。
(4) 被告が悪意の受益者に当たるか否か。
(5) 被告の貸金取引記録の抹消行為は違法か否か。
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)について
ア 原告の主張
(ア) 原告は、昭和57年以前から、旧レイクとの取引を開始したが、開始当時の年利が47.45%もの高利であったこと、その後継続的に取引を重ねてきたこと、年利29%を遥かに上回る利息が徴収されていたことから、平成5年3月8日時点において、法律に従った計算によれば借入債務が残っている可能性はないといってよい。この当時の取引記録は既に被告らによって意図的に抹消されているが、昭和57年ころ以降の取引状況等からすると、平成5年3月8日時点の借入残債務はゼロと推認すべきである。
また、被告は、過払金返還請求を免れるため、10年が経過した取引データを消除したとして、文書提出命令に応じない。民事訴訟法224条の趣旨に照らすと、原告の主張事実が認定されるべきである。
別表1は、平成5年3月8日の借入残高をゼロとして、その後の借入・弁済について利息制限法に従って計算し直したものである。これによれば、過払金が生じており、その額は163万3147円となる。
(イ) 仮に、平成5年3月8日に47万9503円の借入債務が存在していたとして、その後平成14年6月6日まで(9年3か月間)の借入・弁済について利息制限法に従って計算し直したものが、別表2である。これによれば、この間における過払金額は、59万8839円となる。
また、大ざっぱに計算すれば、1年当たり6万3594円の過払金が生じていることになるから、原告が旧レイクと貸金取引していたことが明らかな昭和58年1月27日から平成14年6月6日までの間(19年9か月間)について、上記金額を当てはめて計算すると、この間における過払金は、125万5972円となる。
イ 被告の主張
(ア) 平成10年11月9日までの間における原告と旧レイクとの借入・弁済の状況は、別表2のとおりである。原告は、同日、被告から48万8355円を借り受け、同額を旧レイクに弁済して、旧レイクとの取引は完済をもって終了した。原告と旧レイクとの取引において、仮に過払いが生じていたとしても、それは旧レイクが責任を負うべきであり、被告は関係がない。
原告は、同日、被告から、初めて48万8355円を借り受けることにより取引を開始し、平成14年6月6日まで継続した。その間における原告と被告との借入・弁済の状況は、別表2のとおりである。
また、文書提出命令に従った文書が提出されない場合、原告の主張事実を真実と認めるか否かは、裁判所の自由心証の問題であるから、原告において、原告本人尋問等により立証すべきことになる。
なお、別表1及び2に記載された原告と旧レイク・被告との間の貸金取引について、原告の主張に従って利息制限法に基づき制限超過利息を元本充当した場合に、前記両表に記載された計算結果になることは、争わない。
(イ) 原告は、1年当たりの過払額から全体の過払額を計算すると主張するが、その計算方法は単純すぎ、計算結果は信用できない。
なお、平成5年3月8日以前の過払金は、時効によって消滅している。
(ウ) 別表2の借入・弁済について、利息制限法に従って計算すると、計算上は55万3746円の過払金が生じることになる。しかし、後記(3)のとおり、原告の弁済は、いわゆるみなし弁済となり、過払金は発生しない。
(2) 争点(2)について
ア 原告の主張
(ア) 過払金債務(不当利得返還債務)は、本件営業譲渡契約に含まれる。営業譲渡契約は、特約のない限り、営業に関する一切の財産の移転を約するものであり、社会通念に照らせば、過払金債務が本件営業譲渡契約に含まれていたことは明白である。特定の債権・債務を特に除外することは可能であるが、被告らが、特に過払債務を除外したことはあり得ない。
また、被告が旧レイクの過払金債務を承継するものではないとの主張は、本件訴訟提起から1年近く経過してから出されたものである。他の同種事案に照らしても、被告がこのような免責の主張を行うようになったのは、つい最近のことである。これまで、被告は旧レイクの過払金債務が被告に属することを前提に行動してきたものであり、過払金債務を承継していないことが明白であるならば、このような態度をとる理由がない。
(イ) 商法26条1項は、商号の続用があったにもかかわらず、問題となる債権が営業譲渡の対象から特に除外されていた場合に、第三者の信頼が失われるため、これを保護する規定であり、同条2項はその例外である。同条2項の適用が問題となるのは、当事者が特に特定の債務を承継しないことを定めた場合であって、問題となる債権が営業譲渡の対象に含まれている事例においては、その適用の余地はない。(被告の主張イ(ア)に対する反論)
(ウ) 被告が商法26条2項の免責を主張することは、信義に反するものであって許されない。
被告は、長らく過払金債務者であることを前提に行動してきた。解散した旧レイク(エルと商号変更)とは、本店所在地も同一であり、「ほのぼのレイク」の商号を続用して、原告を含めた多数の顧客に対して営業を継続し、漫然と利息制限法引き直し前の額での請求を継続してきた。過払金の請求を受けるや、従前の態度を翻し、債務のみは解散した旧レイクに属すると主張することは、信義に反し許されない。(被告の主張イ(ア)に対する反論)
イ 被告の主張
(ア) 旧レイクから被告への営業譲渡において、旧レイクの債権債務は、当然には承継されなかった。営業譲渡の際、被告は、旧レイクの債務について責めに任じないとの登記(商法26条2項に定める登記)をした。前記のとおり、原告は、被告から新たに借り受けた金員をもって旧レイクに弁済して、旧レイクとの貸金取引を終了させたものである。
(イ) 被告は、営業譲渡の直後から、顧客に対し、文書、電話、ホームページ等で、新会社になったこと、旧レイクに対して弁済してほしいこと、弁済する資金は新会社(被告)が貸し付ける用意があることを呼びかけた。大半の顧客は、これに応じて、新契約書の作成に応じたのであるから、信義則違反には当たらない。(原告の主張ア(ウ)に対する反論)
(3) 争点(3)について
ア 被告の主張
被告は、貸金業法によって登録が認められた貸金業者であり、原告との取引の都度、貸金業法17条、18条に定める書面を交付しており、かつ、原告の利息の支払いは任意にされたものである。原告の弁済は、いわゆるみなし弁済となり、過払いの問題は生じない。
イ 原告の主張
争う。被告は、そのような事実がないため成り立ちようのないみなし弁済の主張を敢えて行っているにすぎない。
(4) 争点(4)について
ア 原告の主張
被告は、原告から利息制限法所定の制限利率を超える利息を徴収することについて、悪意の受益者である。
イ 被告の主張
被告は、取引の都度、いわゆる17条書面、18条書面を原告に交付しており、かつ、支払は任意にされたと認識していたから、悪意の受益者には当たらない。
(5) 争点(5)について
ア 原告の主張
被告は、過払金請求を免れるため、貸金取引の記録を組織的に抹消するという証拠隠滅行為を行っている。また、被告の貸金取引履歴を殊更に隠匿し、開示請求に応じようとしない。このような被告の行為は、不当利得返還請求を免れるためにする組織的かつ悪質なものであり、不法行為法上の違法性を具備する。
イ 被告の主張
被告が貸金取引データを消除しているのは、10年以上前の貸金債権は消滅時効にかかっているため、保存する意味がないことによる。不当利得返還請求を免れるために消除しているものではない。被告の消除行為は、何ら信義に反する違法なものではない。


コメント