(ア) 原告の主張
a 借換え時における旧債務としては既発生利息分と当日の本来の元金分を合わせたものを借換え時の旧債務として表示する必要があるにもかかわらず(施行規則第13条1項1号カ)、被告は、乙第2号証の1を除くすべての契約書面について、従前貸付けの債務(第1条〈9〉)を正しく記載していない。すなわち、借換え書面のすべてにつき、借換えの対象たる利息債権の記載がない。被告は借換え時に既発生利息及び一部元本につき入金があったものとしていったん処理し(例えば、乙3の6)、一部入金後の減額された残元金の入金が借換え貸付けにより入金されたものとする処理をしている(例えば、乙3の7)。そして、第一段階としての処理分(利息入金分と一部元本入金分)とその処理後の残元金分の合算額を借換え貸付額から差し引いた金額を原告に交付しているのである。
b しかしこのような処理が単なる書面上のものであり、現実の支払でないことは、乙第3号証の6等の借換え時の利息支払の書面につき「お預かり」欄に記載がない(借換え以外の支払では記載されている)ことからも明らかである。
c また、別件過払金返還請求訴訟事件の被告の代理人がそのようなからくりを認めていることからも明らかである(甲1)。すなわち、別件の被告の代理人は被告の業務上、書面上の操作だけ、すなわち金銭のやりとりなしで振替えすることが相当割合存在することを認めている(甲1)。別件の被告代理人は、「受領金額が欄外に記載されていたり、入金処理をした担当者と借り換え貸付処理した担当者が異なる場合は、第一段階として利用者が持参して一部返済したものである。」旨を指摘した上で、「その他(の取引)については、各切替日の弁済は原告(利用者)の所持金からではなく新規貸付金の一部をもって相殺しているものである。従って、原告の指摘するとおりである。」としているのである。これを本件についてみると、例えば、乙第3号証の6の受取証書の欄外には記載がなく、しかも乙第3号証の6と乙第3号証の7の担当者は「泉」で同一であるから、前記別件過払金返還請求訴訟事件の被告の代理人の判断基準によっても、現実の金銭のやりとりのない書面上の操作処理をしていたことが明白である。しかも、乙第3号証の6と乙第3号証の7とは伝票番号が連続しており、一つの手続としてされたことが明白である。同様に、乙第4号証の7、8、乙第5号証の7、8、乙第7号証の7、8、乙第8号証の7、8、乙第9号証の7、8、乙第10号証の7、8、乙第11号証の7、8、乙第12号証の7、8、乙第13号証の11、12、乙第14号証の6、7においてもいずれも預り金の記載がなく、担当者が同一であり、伝票番号が連続している点で全く同様である。したがって、乙第2号証の2、3、5から13までの各書面については、17号書面としての要件を欠いている。
d 被告が主張する施行規則は、従前は通達(大蔵省昭和52.9.30、第2602号、第二の四(2)(ニ))により貸金業法、同施行規則を具体化する規範として定められていたものである。しかも、被告が主張する省令制定以前から、17条書面の要件として旧債務の元本及び利息の記載が必要と解するのが異論のない通説(法曹会貸金業関係事件執務資料94頁)、裁判例であり、かつ同様に被告が当事者となっている事件では省令制定後ではあるが制定前の取引部分についても同一争点となった裁判で、同一の解釈がされている(東京高裁平成13年4月26日判決)。
e 仮に実際にも少額の返済をさせていたとしても、借換え手続を前提としたそのようなやりとりは、重利を徴収するための脱法行為にすぎない。原告が実質的に追加融資を受ける額としては直前に支払った利息分が含まれていると解さざるを得ないものである。いかに被告が策を弄したところで、同一機会に行なわれる追加貸付けの実態を隠蔽することは不可能であり、実態としては、結局のところ、利用者が店に入る前と出るときを比べ、財布の中身が増えた額こそが追加貸付額と理解せざるを得ないからである。したがって、被告が出資法で許容されるぎりぎりの金利を貸付金利としていた場合は利息組み入れした結果、重利に該当し出資法違反に該当することを形式上逃れようとしたもの(脱法行為)にすぎない。したがって出資法違反にも該当し、その結果として、みなし弁済の適用はされないことになるとともに、借換え貸付けにつき従前債務の記載がないものと解されることになる。したがって、乙第2号証の4、14及び15の書面も、17条書面としての要件を欠く。
(イ) 被告の主張
a 原告の主張する現行の施行規則第13条1項1号カの規定は、貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成10年大蔵省令第88号)により新設された規定であり、この省令は、平成10年6月10日から施行されたものであるから、同日よりも前の貸付については適用されない。
b 被告は、本件各貸付けを行う際、従前の債務の経過利息については原告から現金で弁済を受け、残元金のみを新規貸付けの貸付金額に組み入れていたので、17条書面の第1条〈9〉の「従前の貸付けの債務」欄には、残元金のみが記載され、利息・損害金については0とされているのである(乙2の2から15まで)。したがって、被告は、上記省令(施行規則)の適用のある貸付けについても、上記省令(施行規則)の規定に従い、契約書面に従前の債務の残高とその内訳を正しく記載したものである。
c 甲第1号証の準備書面は、当時、当該事件(東京地方裁判所平成15年(ワ)第2045号事件)の被告代理人であった●●弁護士が、上記準備書面を作成する際、被告側と十分な打ち合わせを行わず、記載内容についても提出前に確認をとらないまま、提出したものであり、その記載内容に一部事実に反する記載があったものである。被告は、別件において、上記準備書面が書証として提出されて、初めて当該事件において誤った主張がされていたことを知ったのである。その旨、被告は当該事件において上申書を提出している。なお、本件の原告代理人が原告代理人となっている被告の別件(東京地方裁判所平成15年(ワ)第14056号事件)においても、上記準備書面が書証として提出されたが、平成16年3月30日に言い渡された判決においては、「別事件の被告の準備書面にすぎず、本件について述べたものではないから、原告の主張を裏付ける証拠として採用することはできない。」と判断されている。
d 被告は、本件各貸付けを行う際、従前の債務の経過利息については原告から現金で弁済を受け、残元本のみを新規貸付けの貸付金額に組み入れていたので、契約書面第1条〈9〉の「従前の貸付けの債務」欄には、残元金のみが記載され、利息・損害金については0とされているのである。借換えの際、経過利息を新規貸付けの貸付金額に組み入れたとしても、経過利息に相当する部分には利息を付することができないため、経過利息を新規貸付けの貸付金額に組み入れると、貸付金額の内の現実の現金交付額及び従前の債務の残元金に相当する部分についてのみ利息が発生するという処理になり、利息の計算が煩雑になってしまう。そのため、被告は、従前の債務の経過利息については新規貸付けの貸付金額に組み入れず、債務者から現金で弁済を受けるという処理をしていたのである。したがって、仮に、従前の貸付けの残債務と現実に交付された金員の合計が貸借の目的とされる場合、従前の債務の残高とその内訳(元本、利息、賠償金の別)の記載が必要であると解したとしても、被告は、契約書面に従前の債務の残高とその内訳を記載したものであるということができる。このような処理がなぜに出資法の脱法行為だというのか不明である。
エ 運転免許証及び保険証の各写しの受領の事実の記載の要否について
(ア) 原告の主張
乙第2号証の1について、被告は免許証及び保険証の各写しを受け取っているが(乙18の1)、貸主が受け取る書面の内容(第2条)として記載されていない。被告が本件第1貸付けの貸付手続(乙2の1)において運転免許証及び健康保険証の各写しを取得しながら、これを記載していないことは、その借入申込書(乙18の1)の裏面備考欄のスタンプ上の該当欄に印がつけられているところから明らかである。貸金業者の業務の適正な運用を確保し、資金需要者の利益の保護を図ることを目的とした貸金業法の趣旨からすると、貸金業法43条1項については厳格に解釈すべきものである。したがって、貸金業者が貸付けの際受け取った書面は、何等かの利用価値があるからこそ徴収されるものであるし、またそうであれば資金需要者にとっての利害にかかわる事項である。被告の主張するように、債務の内容に関わるものとの限定を加える根拠はない。本件の運転免許証及び保険証の各写しも、これを貸金業者が取得することは、その後の不正利用の可能性にも鑑み、プライバシーに関わる重要な事項であり、当然受領書面として明示されなければならない。しかも、被告自身が、前記の趣旨を踏まえ、17条書面としての記載漏れがないようにするため、書式をあらためたものが乙第2号証の5以下の書式の書面であり、この書式では貸主が受け取る書面の内容欄に運転免許証写し及び健康保険証写しの欄が設けられているのである。なお、運転免許証写し、健康保険証写しの書面取得の記載要件が欠如する文書は、乙第2号証の1、3及び4である。上記書面は、乙第2号証の5以下でも上記書面の取得が記載されているとおり、被告が徴収することが多い書面であるから、仮に被告が徴収していないものと主張するのであれば、被告は乙第18号証の1、2と同様な借入申込書(顧客カード)を証拠として提出し、これの記載事項から証明すべきである(乙18の1ではこれら書面を取得し、乙18の2では取得していないことがうかがえる。)。被告がこの方法により立証しないのであれば、これらの書類を取得していたにもかかわらず乙第2号証の3及び乙第2号証の4にはその旨を記載していないことが推認される。
(イ) 被告の主張
被告は原告から運転免許証及び健康保険証の各写しを受け取っているのに、借用証書にはその記載がないという原告の主張については、仮にそのような事実があったとしても、債務の内容に関わる記載ではなく、貸金業法17条の趣旨、目的に反することはないから、この点の不記載が17条書面への該当性を失わせるものではない。裁判例でも、領収書兼残高確認書に記載された被告の貸金業登録番号に誤りがあった事例において、17条書面該当性を肯定したものがあり、本件も同様に考えられる(東京地方裁判所平成15年1月27日判決)。
オ エイワキャピタルへの債権譲渡分の貸主の記載について
(ア) 原告の主張
本件第12から14貸付け(乙2の12から14まで)については、貸主が分からない。
(イ) 被告の主張
a エイワキャピタルへの債権譲渡について
(a) 株式会社エイワキャピタル(以下「エイワキャピタル」という。)は、次のような仕組みにより、被告の資金調達を目的として設立された特定目的会社(SPC)である。
〈1〉 エイワキャピタルは一般投資家からの出資金を元手にして被告が有する貸金債権を買い取り、被告はエイワキャピタルに貸金債権を譲渡する(被告は貸金債権の譲渡について借主(顧客)から事前の承諾を得てある。)。
〈2〉 エイワキャピタルと被告との間にはサービサー契約が締結されており、被告はサービサーとして弁済受領、領収書の発行等、譲渡債権に関する一切の業務をエイワキャピタルに代行して行う。
〈3〉 被告は、借主からの回収金をエイワキャピタルに引き渡し、エイワキャピタルは一般投資家に配当を行う。
〈4〉 このスキームは、債権流動化の手法として一般的に行われているものであり、何ら特殊なものではない(SPC方式に関する参考文献として乙20)。
(b) 平成12年10月18日の30万円貸付け(本件第12貸付け)に関して
〈1〉 平成12年10月18日、被告は、原告に対し30万円を貸し付け、同日、当該貸金債権をエイワキャピタルに債権譲渡した。原告は上記譲渡を承諾した(乙2の12・第13条1項頭書及び同項(1))。
〈2〉 上記貸金債権の譲渡後も、エイワキャピタルは上記貸金債権の取立事務を貸主である被告に委任したので、原告は、被告に対して弁済を継続した(乙2の12・第13条1項頭書及び同項(3))。
〈3〉 貸金債権について債権譲渡がされた場合、貸金業法上、債権譲受人は契約書面及び受取証書を借主に交付すべきものとされているが(貸金業法24条2項が同法17条及び18条1項を準用)、被告がエイワキャピタルを代理してこれを行った(乙2の12、乙14の1から7まで)。
〈4〉 貸金業法上、貸金業者は貸金契約を締結したとき契約書面を交付すべきものとされているが(17条)、被告が原告に対して契約書面を交付した行為は、被告自身の貸金業者としての交付行為と、エイワキャピタルの代理人としての交付行為の性質が併存した行為である。したがって、貸金業法17条及び24条2項のいずれをも充足するものである。
〈5〉 平成13年4月12日、原告は上記〈1〉記載の貸金債務を完済した。
(c) 平成13年4月12日の32万円貸付け(本件第13貸付け)について
〈1〉 平成13年4月12日、被告は、原告に対し32万円を貸し付け、同日、当該貸金債権をエイワキャピタルに債権譲渡した。原告は上記譲渡を承諾した(乙2の13・第13条1項頭書及び同項(1))。
〈2〉 上記貸金債権の譲渡後も、エイワキャピタルは上記貸金債権の取立事務を貸主である被告に委任したので、原告は、被告に対して弁済を継続した(乙2の13・第13条1項頭書及び同項(3))。
〈3〉 貸金債権について債権譲渡がされた場合、貸金業法上、債権譲受人は契約書面及び受取証書を借主に交付すべきものとされているが(貸金業法24条2項が17条及び18条1項を準用)、被告がエイワキャピタルを代理してこれを行った(乙2の13、乙15の1から8まで)。上記の被告による契約書面の交付行為は被告自身の貸金業者としての交付行為の性質をも有するものであり、貸金業法17条をも充足するものである。
〈4〉 平成13年10月12日、原告は上記〈1〉記載の貸金債務を完済した。
(d) 平成13年10月12日の32万円貸付け(本件第14貸付け)について
〈1〉 平成13年10月12日、被告は、原告に対し32万円を貸し付け、同日、当該貸金債権をエイワキャピタルに債権譲渡した。原告は上記譲渡を承諾した(乙2の14・第13条1項頭書及び同項(1))。
〈2〉 上記貸金債権の譲渡後も、エイワキャピタルは上記貸金債権の取立事務を貸主である被告に委任したので、原告は、被告に対して弁済を継続した(乙2の14・第13条1項頭書及び同項(3))。
〈3〉 貸金債権について債権譲渡がされた場合、貸金業法上、債権譲受人は契約書面及び受取証書を借主に交付すべきものとされているが(24条2項が17条及び18条1項を準用)、被告がエイワキャピタルを代理してこれを行った(乙2の14、乙16の1から7まで)。
〈4〉 上記の被告による契約書面の交付行為が被告自身の貸金業者としての交付行為の性質をも有するものであり、貸金業法17条をも充足するものである。
〈5〉 平成14年4月11日、原告は上記〈1〉記載の貸金債務を完済した。
b 被告による貸付けと、上記債権譲渡が同一の書面に記載されているにすぎず、適法である。
カ エイワキャピタルへの債権譲渡前の旧債務の記載の要否について
(ア) 原告の主張
被告の主張によれば、すでに被告からエイワキャピタルに債権譲渡がされているから従前貸付けの債務が被告との関係では存しないはずであるが、乙第2号証の13、14及び15には、これが表示されている。
(イ) 被告の主張
争う。
キ エイワキャピタルへの債権譲受日、債権譲受額の記載の適否について
(ア) 原告の主張
被告の主張によれば、各借換え契約日と同日に被告からエイワキャピタルへ債権譲渡がされていたというが、各契約書からそのような事実関係を認識することは不可能である。また、乙第2号証の12から14までについては、貸金業法24条で要求されている「債権譲受日」及び「債権譲受額」の記載がない。被告は乙第2号証の12から14までの第13条1(1)の記載を根拠にして、譲渡日、譲渡額は自明であるとする。しかし、同条項は借主の債権譲渡に対する承諾内容が記載されたものにすぎず、これがあったところで、実際の譲渡日や譲渡される債権額が表示されたことにはならない。しかも債権譲受額は貸金業法の趣旨からすれば、具体的に元本利息等の内容が明示される必要があり、被告の主張は失当である。
(イ) 被告の主張
各貸金契約日と同日に被告からエイワキャピタルに貸金債権が譲渡されたことについては、乙第2号証の12から14までの第13条1(1)に、「貸付金の借主への交付と同日に」(債権譲受人に対し譲渡されること)との記載があるところ、貸付金の借主への交付日は同号証の契約日の記載の下に「上記のとおり借用し本日この金員を受領しました。」とあって、契約日と同日であることが明確であることから、契約書上で容易に認識することができる。また、債権譲受日は債権譲渡日と同日であるのが当然である。債権譲受額については、乙第2号証の12から14までの13条1(1)に、「貸主が借主に対して有する本証書に基づく元本請求権及び利息請求権並びに損害賠償請求権その他一切の権利」と記載されているから明確である。


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