◆ 平成16年12月28日 東京地裁 平16(ワ)7999号
原告(反訴被告) 株式会社シティズ
同代表者代表取締役 X
同訴訟代理人弁護士 ●●
同 ●●
被告(反訴原告) Y1
被告 Y2
主 文
1 被告(反訴原告)Y1及び被告Y2は、原告(反訴被告)に対し、連帯して147万2474円及びこれに対する平成15年3月14日から支払済みまで年30パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。
3 訴訟費用は、本訴請求については被告(反訴原告)Y1及び被告Y2の、反訴請求については被告(反訴原告)Y1の各負担とする。
4 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文と同旨
第2 事案の概要
1 本件は、貸金業を営む原告(反訴被告、以下「原告」という。)が、原告から借入れをした被告(反訴原告)Y1(以下「被告Y1」という。)に対し、また、その連帯保証人である被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)43条1項の適用があるとして、連帯して残元金147万2474円及びこれに対する期限後である平成15年3月14日から支払済みまで利息制限法所定の制限内である年3割の割合による遅延損害金の支払を求めたところ、被告らは、同項の適用がないと主張して争っている事案である。
2 争いのない事実等(証拠の引用のない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 原告は、貸金業法の規定による登録を受けている業者である。
(2) 原告は、被告Y1に対し、平成11年12月22日、業として400万円を次のとおりの約定(以下「本件消費貸借契約」という。)で貸し付けた。
ア 利息 年29.80パーセント(年365日の日割計算)
イ 損害金 年36.50パーセント(年365日の日割計算)
ウ 弁済期及び弁済方法
平成12年1月から平成16年12月まで毎月15日限り、元金6万6000円を利息とともに原告の本・支店に持参又は送金して支払う。ただし、最終支払元金は10万6000円とする。
エ 期限の利益喪失の特約(以下「本件特約」という。)
上記元利金の支払を怠ったときは、通知催告なくして期限の利益を失い、債務全額及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う。
(3) 原告は、被告Y2との間で、平成11年12月22日、本件消費貸借契約の被告Y1の債務を連帯保証する旨の合意(以下「本件連帯保証契約」という。)をした。
(4) 原告は、本件消費貸借契約締結の際に、被告Y1に対し、貸金業法17条1項及び同法施行規則(以下「施行規則」という。)13条に定める事項を記載した貸付契約説明書及び償還表を交付した(甲4ないし6)。
(5) 原告は、本件連帯保証契約締結の際に、被告Y2に対し、貸金業法17条2項及び施行規則14条に定める事項を記載した貸付契約説明書を交付した(甲5)。
(6) 被告Y1は、別紙元利金計算書のとおり、本件消費貸借契約の履行として利息・損害金・元金の一部として弁済した(甲7ないし46)。
(7) 原告は、前記(6)の弁済の都度、1日ないし4日後には、被告Y1に対し、上記各弁済に対応する、貸金業法18条1項及び施行規則15条に定める事項を記載した受取証書(以下「本件受取証書」という。)を郵便で発送した(甲47ないし85の各1・2)。
なお、原告は、原則として被Y1から入金があった日の翌日には本件受取証書を郵便で発送しているが、金曜日に入金があった場合には、翌週の月曜日(なお、平成14年1月及び平成15年1月は月曜日が祝日のため火曜日)に郵便で発送している。
(8) 本件受取証書には、契約番号は記載されているものの、本件消費貸借契約の契約年月日は記載されていない(甲47ないし85の各1・2)。
(9) 被告らは、平成15年2月15日、支払うべき元利金の支払を怠った。
3 争点
(1) 原告が被告らに交付した貸付契約説明書(甲5)の期限の利益喪失の定め(本件特約)は、貸金業法17条の要件を満たすか。
(2) 被告Y1の利息の支払は、貸金業法43条1項の任意性の要件を満たすか。
(3) 償還表(甲6)の記載は、貸金業法17条所定の記載事項である返済期日及び返済額の記載について貸付契約説明書(甲5)を補完したものといえるか。
(4) 本件消費貸借契約の契約年月日の記載がなく、これに代えて契約番号が記載された本件受取証書は、貸金業法18条の要件を満たすか。
(5) 本件受取証書の郵送が、貸金業法18条1項の「直ちに」の要件を満たすか。
4 当事者の主張
(1) 争点(1)について
ア 原告の主張
貸金業法43条は、利息制限法の特則であり、一定の要件の下で債権者が同法の制限を超える利息を取得することを容認するものである。そして、契約当事者は、「元利金の支払を怠ったときは」通知催告なくして、期限の利益を失うことを合意したものであって、この合意を「利息制限法上支払義務のある利息及び原本の支払を怠ったとき」と限定的に解釈すべき理由はなく、原告が被告らに交付した貸付契約説明書の期限の利益喪失の定めは、同法17条の要件を満たすものである。
被告らの主張の根底には、「貸金業法43条の要件を満たす場合でも利息制限法を超過する利息の約定そのものが超過部分につき無効である」との認識があると思われる。しかし、同法43条と利息制限法とは、「一般法・特別法の関係」に立つのであり、特別法である同法43条の適用がある場合は一般法である利息制限法の適用は当然排除されることになる。したがって、同法43条の適用により、利息制限法所定の制限利率を超過する利息の弁済が有効とみなされる場合、利息制限法の適用は当然排除されるのであるから、「みなし弁済」の前提となる約定利息を有効と解するほかない。
イ 被告らの主張
原告が被告らに交付した貸付契約説明書(甲5)5項等の本件特約は、「元金又は利息の支払いを遅滞したとき、…は催告の手続きを要せずして期限の利益を失いただちに元利金を一時に支払います。」との記載である。このような内容の約定は、債務者が支払期日までに利息制限法所定の利息金さえ支払えば期限の利益を喪失しないという事実に反すると同時に、債務者に利息制限法所定の制限利率を超過する無効な約定利息の支払を求める合意であるから、約定自体が公序良俗に反し無効である。このような無効な約定を記載した本件特約は、貸金業法17条1項、2項、施行規則13条、14条に規定する「期限の利益の喪失の定め」にはあたらないから、本件貸付契約説明書等には同法17条所定の記載事項である期限の利益喪失の定めの記載がないことになる。
(2) 争点(2)について
ア 原告の主張
貸金業法43条1項及び3項にいう「任意に支払った」とは、債務者が契約に基づく利息又は損害金の支払に充当されることを認識したうえ自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい、債務者においてその支払った金額が利息制限法の制限利息・賠償額を超過したものであることあるいは当該超過分の契約が無効であることまでを認識していることを要しないと解すべきである。
そうだとすると、本件特約においても、借主は、自らの責任で利息制限法を知って、分割元金と利息制限法所定の制限利率により計算した利息を支払い、かつ、その意思を表示すれば期限の利益を喪失することはないということを判断すべきである。借主において、利息制限法を知らない借主のため、わざわざその旨の注記をして、法を知らない借主を保護しなければならない義務はない。
したがって、本件特約の下での支払につき、「任意性」があるのは当然のことである。
イ 被告の主張
本件特約によれば、超過利息を含む約定の利息を支払わなければ、期限の利益を喪失し、残元金と遅延損害金を一括して直ちに支払わなければならないことになる。被告らの超過利息の弁済は、このような不利益を回避するためのものであり、債務者が自己の自由な意思に従ってしたものということができず、任意の支払ということにはならない。
(3) 争点(3)について
ア 原告の主張
償還表(甲6)は、あくまでも当初の約定に従って弁済がされた場合の支払予定表であるから、償還表の記載と一致しない支払があった場合には、その後の支払は償還表と一致しなくなるのはむしろ当然のことである。そこで、償還表にも「本償還表と一致しないお支払があったときは、その後のお支払額は本表と一致しなくなりますので、金額確認の上お支払下さい。」と明記しているし、貸付契約説明書(甲5)2項及び6項にも利息及び損害金の計算方法について明記している。したがって、償還表の記載は、貸金業法17条所定の記載事項である返済期日及び返済額の記載について貸付契約説明書を補完したものといえる。
イ 被告の主張
被告らが、当初の約定に従った分割弁済をしない場合は、約定に基づく弁済額等が当初の返済期日及び返済額と異なり、償還表(甲6)には、この場合の返済額等の記載がないことになる。この場合には、貸付契約説明書と償還表との関連が不明確であることもあり、償還表の記載は、貸金業法17条所定の事項を記載した書面(以下「法17条書面」という。)の記載事項である返済期日及び返済額の記載について貸付説明書を補完したものとはいえない。
(4) 争点(4)について
ア 原告の主張
貸金業法は、18条1項本文で、貸金業者が弁済者に交付すべき受取証書につき、「大蔵省令(現在は内閣府令)で定めるところにより」と定めており、これは法の趣旨に反しない範囲で受取証書の記載要件の詳細を施行規則に委ね、同施行規則15条2項は、弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって、同法第18条1項1号から3号までの事項の記載に代えることができる旨定めている。
施行規則の上記定めは、受取証書に契約番号の記載がされている場合には、どの債務につき弁済がされたかが明らかであり、同法18条1項1号から3号までの記載がなくても、貸金業者と債務者との間の貸借関係を明確にさせようとする法の目的を達成できるものとして設けられたものと解せられる。そして、原告の送付した本件受取証書には全て契約番号の記載があるのであるから、法43条1項2号の適用に欠けるところはない。
イ 被告の主張
原告が貸金業法18条所定の事項を記載した書面(以下「法18条書面」という。)とする本件受取証書(甲7~46)には、同法18条の記載事項である契約年月日の記載がない。原告は契約番号の記載でこれに代える(施行規則15条2項)と主張するが、施行規則のような省令によって同法18条の規定を緩和するためには契約年月日を記載することが不可能又は著しく困難であるなどの特段の事情を要するところ、本件においてはそのような特段の事情は存しない。


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