ウ 利息の先払について
(ア) 当裁判所は、法43条1項は、利息が先払された場合には適用がないと判断する。
(イ) 何故ならば、利息の先払は、そもそも、元本使用の対価であるべき利息を元本を利用する以前に支払わせるものであるから、純経済的・実質的に考えて不合理なものであること、純経済的・実質的に計算すると利息が後払いの際に比して高利となること、任意の支払が想定できないことは、利息の天引と同様であるからである。
(ウ) そして、前提事実記載のとおり、原告らの支払は、いずれも利息の先払がされているから、本件各弁済には、この点においても、法43条1項の適用はない。
(エ)a これに対して、被告は、原告らが約定に従い、元本返済を猶予するため、その意思で、利息の先払をして、期限の利益を得たものであるから、任意の支払である旨主張する。
b しかし、前記1で認定判断したとおり、原告らと被告間の一連の金銭消費貸借契約の実質は、包括的契約に基づく一体のもので、利息について各月に翌月分の利息を先払するとの特約が定められ、元本については根保証の終期を弁済期とするが、更新を許し、利息については月払いとされた金銭消費貸借と実質上は同視すべきものと解される。
このような原告らと被告間の金銭消費貸借契約の実質を前提とすると、原告らが1月ごとの各弁済期に、契約を継続するか否かを任意に選択しうるとの被告の主張は、実態に合致しない。
c また、被告の主張は、基本取引約定書の承諾条項22条の約定があり、その約定は、借主らが自由意思で締結したものであるから、その条項に基づく利息の支払は任意のものと解すべきとの主張と解される。
しかし、前記の立法趣旨からすると、法43条1項は、強行法規であることは明らかであるから、利息の先取がされた場合が適用の対象となるかが争われている場面で、当事者間の任意の約定によって利息の先取を可能としたからといって、強行法規の適用が排除される謂われはない。
d 更に、そもそも、利息制限法を超える利息の支払は、本来法律上支払義務がないのに、前記1(1)エのとおり、基本取引約定書には、その一部の支払でも怠った場合は、その債務者が負う全部の債務について期限の利益を失う旨の定めがあるところ、それは、利息制限法を超える部分の支払を求める部分については、無効と解すべきであるのに、債務者としては、それを、あたかも法的に有効かのごとく誤解し、錯誤に基づいて支払うしかないものであるから、錯誤に基づく支払であって、任意の支払とはいえない。
e したがって、被告のこの主張は、理由がない。
(3) 〈4〉法17条の規定による法定の契約書面を交付している者に対する支払かについて
ア 被告は、原告ティーアンドティーに対して交付した契約書面として基本取引約定書である乙1と個別借用証書である乙2の1を挙げ、それについて、法17条1項の法定事項が記載されている内容を具体的に主張し、〈4〉の要件を充たす旨主張し、他の貸付についても、乙2を交付したと主張したから、同様に〈4〉の要件を充たすと抽象的に主張し、その説明として乙15を引用し、主張する。
また、更に、原告糟谷企画についても交付した書面として基本取引約定書である乙9、個別借用書である乙10を引用して、抽象的に、原告ティーアンドティー同様〈4〉の要件を充たす旨主張する。
しかし、弁論主義の観点から、少なくとも、大部に亘る詳細な、一般論の記載された書証全体を引用し、個別事案についての具体的事実の主張のない場合には、具体的な主張があると解することは困難である。
そうすると、この点の被告の主張は、主張自体失当と解すべきである。
したがって、この点においても、本件各弁済は、法43条1項の適用はない。
イ 仮に、被告の主張が、主張自体失当でなく、かつ、乙15の内容について、裁判所において善解して、被告の主張であると解することができたとしても、本件においては、少なくとも、次で指摘する点において、〈4〉の要件を充たさないから、この点においても、本件各弁済については、法43条1項の適用はないと解すべきである。
(ア)a 仮に、基本取引約定書と個別借用証書を併せて契約書面と解することができるとしても、法17条1項が契約書面の交付を要求した趣旨は、債務者が貸付に係る契約の内容又はこれに基づく充当関係が不明確であることなどによって、不利益を被ることがないようにするものであることからすると、貸付の内容や充当関係に関する事項について、誤りがある場合には、契約書面の要件を充たさないと解すべきである。
b そこで、まず、法17条1項4号の貸付利率について検討する。
原告ティーアンドティーに対する個別借用証書である乙2においては、利率と実質年利の共通の数値として、それぞれ39.65%、39.26%、39.03%の記載があるが、そのいずれの数値も現実に手渡された金額を前提として計算した場合の個別借用証書記載の貸付金利息ないし利息/割引料/諸費用の額とも一致せず、額面上の貸借金額を前提としても同様である。また、日歩8銭との記載もあり、これは計算すると、形式上の元本から形式上の利息を算定する際に用いる数値のようであるが、実質利息ともとれ、不明確である。
原告糟谷企画に対する個別借用証書である乙10においても同様である。
c そうすると、貸付利率という貸付の内容のうち、極めて重要な部分について、不正確で、かつ、不明確な記載があることとなるから、この点のみからも、法17条1項の要件を充たす契約書面とはいえない。
(イ)a 1で認定判断したように、基本取引約定書承諾条項22条但書によると、根保証の期間内は、翌月の利息金の先払によって、弁済期が猶予されうる約定となっているから、法17条1項4号の趣旨からすると、契約書面において、その利率が定められておくべきと解される。
しかし、それは、同条但書によって、後に送付される取引案内の記載によって、被告が一方的に定められることとなっている。
これは、法17条1項4号ないしその趣旨に反すると解すべきである。
b そうすると、貸付利率という、貸付の内容のうち極めて重要な部分について、抽象的、包括的な記載があることとなるから、この点においても、法17条1項の要件を充たす契約書面とはいえない。
(4) 〈5〉法18条1項の規定による法定の受取証書を交付した場合における支払であるかについて
ア 被告は、受取証書に関しても、契約証書と同様に具体的には一例を挙げるのみで、後は抽象的な主張をし、説明として乙16を引用するなどして、主張する。
しかし、これについても、契約証書について、前記1(3)アで判断したとおり、主張自体失当であって、この点においても、本件各弁済は、法43条1項に該当しない。
イ 仮に、被告の主張が、主張自体失当でなく、かつ、乙16の内容について、裁判所において善解して、被告の主張であると解することができたとしても、本件においては、少なくとも、次で指摘する点において、〈4〉の要件を充たさないと解すべきである。
したがって、この点においても、本件各弁済は、法43条1項に該当しない。
(ア) 受取書面該当性
a B、C型書面には、送付した後に支払うべき1月分の先払利息に関する記載があるのみであって、現に支払われた金員に関する記載がないから、法18条1項4号記載の受領金額及びその利息、賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額、5号記載の受領年月日に関連する記載が一切なく、受取書面に該当しないことは明らかである。
b A、D型書面については、「前回取引のご報告」の記載があるので、形式上、法18条1項4号、5号に関連する記載はあるから、受取書面に該当するかが一応は問題となる。
しかし、それらも、次のとおり、受取証書の要件を充たさないと解すべきである。
(a) A、D型書面とも、法18条1項2号記載の契約年月日の記載がない。
(b) A、D型書面とも、利息の他手数料等が計上されているが、これは、利息制限法3条にいうみなし利息と解されるので、法18条1項4号の趣旨からすると、利息ないしみなし利息として記載されるべきであるのに、その旨の記載がない。
(c) 乙5の2ないし7、9ないし12、乙11の2ないし4(A型書面)に記載されている実質年利に基づいて計算した場合、それぞれに記載された利息額とも利息と費用を加えた額にも一致しない。
(d) 乙8、14(D型書面)に記載されている実質年利に基づいて計算した場合も同様であって、かつ、実質年利ほかレート(利率)として7.500銭及び8.000銭との記載があり、計算すると、これは、形式上の元本から形式上の利息を算定する際に用いる数値のようであるが、実質利息の記載ともとれ、不明確である。
c したがって、被告が受取証書として提出する取引案内は、いずれも、法18条1項にいう受取証書の要件を充たさない。
(イ) 口座振替の際の受取証書の交付時期
a 債務者の利息の支払が貸金業者の預金又は貯金に対する払込によってされた場合、貸金業者が法43条1項の適用を受けるためには、特段の事情のない限り、貸金業者は、払込を受けたことを確認した都度、直ちに受取証書を債務者に交付しなければならない(最高裁平成11年判決)。
なぜならば、弁済された金員の元利充当関係を明らかにされることによって、これを手掛かりに法律上負うべき債務の内容を計算し、請求額のうち法律上支払わなくて良い債務を認識し、貸金業者に対する権利主張が可能となるのに、債務者がこれを行使しなかったことが法43条1項の適用を認める前提となるからである。
このように解すならば、「直ちに」の要件は厳格に解されるべきである。
b そして、取引案内(乙5ないし8、11ないし14)記載の作成時点に乙16を総合すると、被告においては、概ね、各債務者に、1月後の次回の先払利息日の10日弱、即ち、債務者の弁済があった20日余り後に送付する社内システムを採用していたと窺える。
c しかし、前記の法43条1項の趣旨に鑑み、債務者側の立場を考慮すると、弁済後、20日余り後の送付は、「直ちに」送付されたと解すべきではない。
d なお、被告は、乙16を提出し、企業規模が巨大で、顧客が膨大であること、したがって、その全員により早期に受取証書を交付する社内システムを構築することは困難であるので、20日余り後の送付も「直ちに」に該当すると主張、立証するようである。
しかし、被告が受取証書として主張するものは、実際は、翌月の取引案内を兼ねている、或いは、特にB型書面、C型書面において顕著なように、翌月の取引案内それ自体であるから、現在構築されている社内システムは、そもそも、受取証書を「直ちに」債務者に送付することを目指したものとは認められない。したがって、現にこのようなシステムが構築されているからといって、受取証書を「直ちに」債務者に送付するシステムの構築が困難であるとは推認できない。
更に、膨大な顧客に対し、法43条1項の適用を受け、それに見合った利益を得るためには、それに応じた経費を支出し、法に適った社内システムを構築すべきことは、法的観点のみならず、経済的観点からも当然であって、逆に、法に適った社内システムを構築することが、実際上・経済上不可能であるなら、みなし弁済が有効とされることを放棄するか、被告において法に適った社内システムを構築することが可能な限度に顧客の数を制限するような経営方針を採用すればよい。
したがって、被告の主張、立証が前記のようなものであっても、それは、理由がない。
e そうすると、本件各支払は、この点においても、〈5〉の要件を充たさない。
3 計算方法
(1) 1で認定判断したとおり、各原告と被告との一連の金銭消費貸借契約は、実質上一体と解すべきであり、その実質は、各貸付の際、根保証期間を元本の原則的な弁済期として、利息を月払とした金銭消費貸借契約と解すべきである。
そうすると、本件における不当利得額算出においては、各原告ごとに一連として計算すべきである。
(2) また、各貸付の際の天引利息の計算については、各貸付の形式を捉えると、当初の約定の期間について利息制限法2条によって計算すべきことになるようである。
しかし、前記認定の契約の実質からすると、各貸付は一体の契約と捉えるべきであって、各貸付の当初の約定の期間は、継続取引が原則とされていることが前記認定のとおりでその実質的意味は乏しいから、各貸付の当初に、天引利息の元本弁済があったとして計算するのが相当である。
(3) そうすると、原告らの主張する計算方法が相当である。
なお、後記4で判断するように、被告には、平成9年9月4日時点で、不当利得発生について悪意であるとすべきである。したがって、その時点から、年5%の割合の遅延損害金の発生を認めるべきであって、平成9年9月4日から同月23日までの359円《13万1137円×0.05×20÷365》、同月24日から同年11月12日までの1528円《22万3137円×0.05×50÷365》の確定利息を、平成11年11月13日の元本算定の際に控除すると、計算書(1)のとおりとなる。
4 遅延損害金の起算点、即ち、被告の悪意の有無
・法43条1項は利息制限法1条1項、4条1項の例外規定であること、
・法43条1項適用の各要件については被告において主張立証責任があること、
・前記2で認定判断のとおり、被告の受けた支払に関しては、多くの点で法43条1項の要件を充たさないものであったこと、
・本件において原告らが遅延利息を請求する始期のうち早期の方は平成12年4月5日であって、他に、原告糟谷企画においては、平成9年9月4日から平成9年11月12日までの確定利息を元本債務に充当するが、その当時、本件と同様な方法で被告が貸付をした場合に、法43条1項の適用がないと判断した下級審の裁判例は多々存在したことは公知の事実であること、
・貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払い込みによってされたときであっても、特段の事情のない限り、貸金業者は、その払い込みを受けたことを確認した都度、直ちに、受取証書を債務者に交付しなければならないと解するのが相当であるとの最高裁平成11年判決が平成11年1月21日にされているのに、被告自身、その後である平成12年3月頃まで受取証書となり得ないことが形式上明らかなC型書面(乙7、13)を用いており、そのことは当然、当時知っていたのみならず、本訴において、受取証書を直ちに、各原告に交付した旨の主張、立証をしておらず、かえって、前記のとおり、返済後20日後頃送付されたと認められること、
・被告は、原告の不当利得に対して悪意であるとの主張に対し、具体的事情に基づいた反論、反証をせず、そのような具体的事情は、本件全証拠によっても窺われないこと
を総合すると、被告は、本件各不当利得返還請求権が発生した時点で、その発生について悪意であったと推認することができる。
そうすると、本件における遅延損害金の起算点は、民法704条に基づき、不当利得返還請求権が発生した時点であると解するのが相当である。
5 よって、原告の請求は、全部理由がある。
(裁判官 水野有子)
別表(1)
平成12年 4月 5日 135,034
平成12年 5月 9日 197,200
平成12年 6月 7日 191,072
平成12年 7月 6日 194,468
平成12年 8月 8日 193,101
平成12年 9月 5日 196,736
平成12年10月 5日 6,604
平成12年10月 5日 193,101
平成12年11月 6日 193,492
平成12年12月 7日 196,344
平成13年 1月 5日 194,729
平成13年 2月 6日 179,897
平成13年 3月 6日 199,102
平成13年 4月 6日 192,948
平成13年 5月 8日 195,276
平成13年 6月 7日 189,120
平成13年 7月24日 100,000
平成13年 8月 6日 100,000
平成13年 8月24日 80,000
平成13年 9月 7日 50,000
別表(2)
平成13年 2月 5日 225,956
平成13年 3月 5日 274,307
平成13年 4月 5日 265,675
平成13年 5月 7日 274,307
平成13年 8月 6日 274,307
平成13年 9月 5日 265,675
平成13年10月 5日 274,307
平成13年11月 5日 265,675
平成13年12月 5日 274,307
平成14年 1月18日 274,307
別紙 利息制限法による計算書(1)・(2)〈省略〉


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