◆ 平成15年11月28日 東京地裁 平14(ワ)17126号
原告 株式会社糟谷企画(以下「原告糟谷企画」という。)
同代表者代表取締役 ●●
原告 株式会社ティーアンドティー総合企画(以下「原告ティーアンドティー」という。)
同代表者代表取締役 ●●
原告ら2名訴訟代理人弁護士 ●●
被告 株式会社SFCG(旧商号株式会社商工ファンド)
同代表者代表取締役 ●●
同訴訟代理人弁護士 ●●
同上 ●●
同訴訟復代理人弁護士 ●●
主 文
1 被告は、原告糟谷企画に対し、317万8224円及び内別表(1)記載の各日付の金額に対し、それぞれ同日付の翌日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告ティーアンドティーに対し、266万8623円及び内別表(2)記載の各日付の金額に対し、それぞれ同日付の翌日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 本判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 いわゆる商工ローン業を営む株式会社である被告から、継続的に金員を借り入れ、弁済していた原告らが、弁済金について、利息制限法によって引き直して計算すると、過払金があるとして、不当利得に基づきその返還を求め、更に、被告が過払金の発生について悪意であると主張して、各過払金の発生の翌日から支払済まで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案
これに対し、被告は、主に、原告らの返済には、貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)43条1項のみなし弁済の適用があるから、有効な弁済であって、不当利得は発生しないと主張し、争っている。
(以下、証拠を摘示する際、枝番がある物について各枝番の書証すべてを含む場合には、親番号のみ摘示し、枝番の一部を用いる場合には、枝番を特定して摘示することとする。)
2 前提事実(証拠に基づく事実は、後掲括弧内に証拠摘示する。)
(1) 原告糟谷企画は、テレビ、ラジオ番組の企画、製作の業を営む株式会社である。原告ティーアンドティーは、芸能プロダクション経営等の業を営む株式会社である。
被告は、昭和53年12月、金融業を営む目的で設立された、中小企業向けの貸金業者、すなわち、いわゆる商工ローン業者であり、東証第1部に上場している業者である。
(2) 原告糟谷企画は、平成8年3月6日、被告との間で継続的金銭消費貸借基本契約を締結するとともに、被告から300万円を借り入れ、以降、糟谷企画(商工ファンド)別紙利息制限法による計算書(1)(以下「計算書(1)」という。)貸付欄記載のとおり、金員を借り入れ、被告に同返済欄記載のとおり、金員を支払った。
(3) 原告ティーアンドティーは、平成8年3月4日、被告との間で継続的金銭消費貸借基本契約を締結するとともに、被告から200万円を借り入れ、以降、(株)T&T総合企画(商工ファンド)別紙利息制限法による計算書(2)(以下「計算書(2)」という。)貸付欄記載のとおり、金員を借り入れ、被告に同返済欄記載のとおり、金員を支払った(原告らの支払を併せて「本件各弁済」という。)。
3 争点
(1) 法43条1項のみなし弁済の適用の有無
ア 被告の主張
(ア) 被告は、関東財務局に登録する貸金業者であり、法43条1項の適用を受ける権限がある。その適用を受けるための要件は、〈1〉利息支払の任意性、〈2〉法17条に法定された書面(以下「契約書面」という。)の交付、〈3〉法18条に法定された書面(以下「受取証書」という。)の交付である。
(イ) 〈1〉利息支払の任意性について
a 被告は、原告らに対する貸付において、当初の貸付の際には、利息を天引しており、貸付期間満了日に原告らが元本一括返済ができない場合には、次月の1か月分の利息を先払することを条件に、元本一括返済の期限を猶予した。
b 天引について
天引は、利息制限法及び出資法5条4項において認められているから、貸金業法の適用においても、認められている。
したがって、天引がされていても、任意性は否定されない。
c 利息先払について
本来は、当初の貸付期間満了により原告らに元本一括返済の義務があるが、原告らの都合で、その自由意思に基づいて貸付期間の延長を求めたものである(乙1、9(以下、「基本取引約定書」という。)、承諾条項22条)。
したがって、利息先払がされていても、任意性は否定されない。
(ウ) 〈2〉契約書面の交付について
a 原告ティーアンドティー関係
(a) 平成8年3月4日の200万円の貸付時に、基本取引約定書(乙1)と借用証書(乙2の1、以下、個別の貸付について記載した借用証書を「個別借用証書」という。)が、契約書面として交付され、原告ティーアンドティーは、これを受領した。
これら2通の書面には、以下に記載する法17条1項の法定記載事項が漏れなく記載されている。
i 貸金業者の商号等 株式会社商工ファンド
関東財務局長(3)第00754号
ii 契約年月日 平成8年3月4日
iii 貸付の金額 200万円
iv 貸付の利率 年39.65%(実質年利)
v 返済の方式 利息天引、元本一括返済
vi 返済期間 平成8年3月4日~4月5日
vii 賠償額の予定 40.004%
(b) 原告ティーアンドティーは、これらの貸付条件を承知し、被告との間で、金銭消費貸借契約を締結した。また、その後、6回にわたり貸付を受け、その都度、契約書面として乙2を受領した。
(c) これらの書面には、法定要件が全て記載されている。乙15において、上記各書面の要件具備性が詳細に説明されているので参照されたい。
b 原告糟谷企画関係
原告糟谷企画についても、原告ティーアンドティーと同様に、基本取引約定書(乙9)と個別契約証書(乙10)とを交付した。その記載事項及び記載内容は、上記の原告ティーアンドティーと同様である。
c 原告らは、契約書面について、何か異議を申し述べたとか、不都合を指摘したという事実はない。原告らは、被告から資金調達の恩恵を受け、かつ、それを継続的に行いながら、後になって契約書面の不備を主張することは、いわゆる禁反言の原則に反する。
(エ) 〈3〉受取証書の交付について
a 原告ティーアンドティー関係
(a) 原告ティーアンドティーは、約定の返済期日に元本を一括して返済すべきであったが、希望して、返済期限を猶予する貸付期間の自動延長を行った。これは、基本取引約定書(乙1)承諾条項22条に記載されている、貸付期間の自動延長規定に基づき、1か月分の利息を先払することにより、元本一括返済日が1か月猶予されるという制度(フリーローン)を選択した。
(b) 原告からの毎月の利息の支払がある度に、被告は、受取証書として、乙5ないし8(以下、乙11ないし14も併せて「取引案内」という。)を日本橋郵便局から郵送により交付した。取引案内には、時代別に4つのタイプがある。
i A型書面 乙5
ii B型書面 乙6
iii C型書面 乙7
iv D型書面 乙8
(c) これらの書面には、法18条1項に記載されている法定記載事項を全て網羅する記載がある。例えば、上記のA型書面について説明すると、次のようになる。
i 貸金業者の商号等 株式会社商工ファンド
関東財務局長(3)第00754
ii 契約年月日 平成8年3月4日
iii 貸付の金額 200万円
iv 受領金額及びその利息 6万1300円 実質年利 38.4%
v 受領年月日 平成8年4月5日
(d) 被告が原告に交付した受取証書の要件該当性については、乙16において、各タイプ別に詳細に説明がされているので参照されたい。
b 原告糟谷企画関係
原告糟谷企画にも、原告ティーアンドティーと同様に、法18条1項の要件に該当する弁済がある度に取引案内を交付した。
(a) A型書面 乙11
(b) B型書面 乙12
(c) C型書面 乙13
(d) D型書面 乙14
c 受取証書にとって重要なことは、かかる書面における記載内容が債務者に対して充当計算の手掛かりを与えているか否かということであり、「杓子定規に規定を適用すること」ではない。
このことは、最判平成2年1月22日民集44巻1号332頁(以下「最高裁平成2年判決」という。)、東京地裁のいくつかの部の和解方針(乙27)から、明らかである。


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