第3 当裁判所の判断
1 被告エイワ関係
(1) 法43条のみなし弁済の成否
ア 17条書面について
(ア) 乙2ないし19によると、原告Aは、被告エイワから、本件で問題となっている貸付を受ける際に、借用証書(控)と題する書面の交付を受けていること、その書面には、貸金業者である被告エイワの商号、住所(法17条1項1号)、契約年月日(同項2号)、貸付の金額(同項3号)(なお、借換の問題については後述。)、貸付の利率(同項4号)、返済の方式(同項5号)、返済期間及び返済回数(同項6号)、賠償額の予定の内容(同項7号)、内閣府令で定まる事項(同項9号)(なお、借換の問題については後述。)の記載があることが認められる。
したがって、借換が問題とならない、平成3年5月15日、平成9年8月18日の各貸付については、17条書面交付の要件を充たす。
(イ) そこで、借換が問題となる貸付について、まず、事実関係について判断する。
a なお、原告Aと被告エイワの間で、別紙借換一覧表の各貸付の際に、いわゆる借換が行われていることは当事者間に争いがない。
b そして、その際、被告エイワが原告Aに、17条書面として交付した借用証書(控)、18条書面として交付した領収書兼残高確認書においては、原告Aが、旧貸付金の利息を持参し、それを被告エイワに弁済し、その後、被告エイワが原告Aに、新旧貸付金の元本差額金を交付した旨の記載がある。
c しかし、実際の金銭の授受が、上記各書面の記載のとおり行われたことを認めるに足りる証拠はない。
かえって、原告A本人の供述によると、多くの場合は、新貸付金から旧貸付金の元本及び利息を控除したものが原告Aに交付されたものと窺える。
d なお、被告エイワは、別紙借換一覧表〈4〉ないし〈9〉、〈11〉、〈13〉、〈14〉の各借換の際には、上記各書面の記載のとおり実際の金銭の授受がされたものであると主張し、その根拠として、そのことは対応する領収書兼残高確認書の欄外に新旧貸付の元本の差額の記載があること、新貸付に関する省令16条3項に基づく書面と旧貸付に関する領収書兼残高確認書に記載された担当者が異なることから明らかであることを指摘して、主張する。
しかし、被告エイワが指摘する各点のみから、上記各書面の記載のとおり実際の金銭の授受がされたと推認することはできない。
e 付言するに、被告エイワは、借換の際、旧貸付の利息について、実際の金銭の授受がされていないことを認めたのは、真実に反し、錯誤に基づくので自白の撤回をし、その点の立証を求めるとして、弁論再開をするよう上申した。
しかし、被告エイワが、その立証のための書証として提出する陳述書は、本件で問題となった具体的な借換に携わった者が作成したものではないから、その請求によって、当裁判所の判断は左右されない。
したがって、弁論の再開はしないこととした。
(ウ) 次に、その齟齬が、17条書面該当性を否定するかを判断する。
法43条1項が、17条書面の交付を要求する趣旨は、債務者が貸付に係る契約の内容又はこれに基づく支払の充当関係が不明確であることなどによって不利益を被ることがないようにするためであることからすると、17条書面においては実際の金銭の授受と一致することが求められていると解される。
そうすると、前記(イ)記載の齟齬がある以上、被告エイワが、借換に際して交付した借用証書(控)は、17条書面に該当しないと解すべきである。
イ 18条書面について
(ア)a 乙20ないし183(なお、乙21、44、58、87、89、101、112、123、145、162、163、170、171のうち、原告B作成部分以外については、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められ、原告B作成部分については、原告A本人によると、原告Bの意思に基づき作成されたと認められるから、真正に成立したと認められる。)、原告A本人によると、原告Aないし原告Aに委託を受けたその履行補助者である原告Bが、被告エイワに各弁済をする際、被告エイワは、原告Aないしその履行補助者である原告Bに、領収書兼残高確認書を交付した事実、領収書兼残高確認書には、貸金業者の商号及び住所(法18条1項1号)、契約年月日(同項2号)、貸付の金額(同項3号)、受領金額及びその利息、賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額(同項4号)(なお、借換の問題については後述。)、受領年月日(同項5号)、内閣府令で定める事項(同項6号)(なお、借換の問題については後述。)の記載があるので、借換に関連する問題がある場合以外については、18条書面の交付の要件を充たす。
b なお、原告Aは、原告Aの妻原告Bが弁済し、領収書兼残高確認書の交付を受けた場合には、原告Aに対し、18条書面の交付があったとはいえない旨反論する。
しかし、前記でも認定したが、原告A本人によると、原告Bの立場は、原告Aの弁済における履行補助者と認められるところ、貸金業者が債務者の履行補助者に交付した場合は、18条書面の交付を否定するいわれはない。
よって、原告Aの反論は採用しない。
(イ) 借換が問題となる弁済、即ち、別紙借換一覧表の各借換の際の弁済に関する事実関係は、前記ア(イ)のとおりであるから、実際の金銭の授受が、上記各書面の記載のとおり行われたことを認めるに足りる証拠はないことになる。
(ウ) 次に、その齟齬が、18条書面該当性を否定するかであるが、法43条1項が、18条書面の交付を要求する趣旨は、17条書面の交付を要求する趣旨と同様であるから、前記(イ)記載の齟齬がある以上、被告エイワが、借換に際して交付した領収書兼残高確認書は、18条書面に該当しないと解すべきである。
(エ) そして、前記アからすると、別紙借換一覧表〈1〉以降の借換の際の貸付については、17条書面の交付がないから、それに対する弁済に法43条1項の適用はないことになる。
そうであるのに、被告エイワの、その時点以降に作成した領収書兼残高確認書は、法43条1項の適用があることを前提として作成されているから、必然的に、正しい充当関係と異なる記載であることになる。
そして、前記(ウ)で述べた18条書面の趣旨からすると、その充当関係の記載は、貸金業者が正しいと信頼したものを記載することでは足りず、正しい充当関係の記載がされる必要があると解すべきである。
そうすると、それ以降の領収書兼残高確認書は、18条書面に該当しないこととなり、それ以降の弁済については、法43条の適用はないこととなる。
ウ 任意性について
被告エイワが、貸付の際、借換が問題となる場合以外は、適法な17条書面を原告Aに交付し、別紙借換一覧表〈1〉の弁済以前は、弁済の際に、適法な18条書面を原告Aに交付していたこと、原告A本人によっても、各弁済の際に、脅迫、欺罔など、原告Aの任意性を害すべき事情は窺えないことを総合すると、別紙借換一覧表〈1〉の貸付より前の弁済は、任意にされたと認めるのが相当である。
エ そうすると、原告Aの弁済のうち、平成3年11月1日より前の弁済、即ち、同年10月3日までの弁済は、乙2によって認められる約定利息54.75%のとおり支払われているものであるから、法43条の適用があることとなり、不当利得は発生しないことになる。
他方、同年11月1日以降の弁済については、法43条の適用はないと解されるから、それ以降の弁済について、利息制限法を適用し、充当して算出すべきである。
そして、同年10月3日の元金は、計算上4万2718円となるから(乙26)、原告Aの不当利得返還請求権の元本は、別紙裁判所計算書(原告A・被告エイワ)のとおり、42万2497円となる。
(2) 不当利得に関する悪意
ア そもそも、法43条が利息制限法の例外規定であって、かつ、法43条1項の要件については、貸金業者に主張、立証責任がある。
また、本来、法43条の適用の有無は最終的には将来的な裁判所の判断によって定まるものであるから、貸金業者において、どのような見解を採用しても法43条1項の要件を充たし、かつ、その立証ができる場合としか考えられないシステムを採用している場合以外においては、当然、最終的に法43条の適用がない危険も想定すべきであるし、現に、通常の一般人であれば想定するものと解される。
これらの点を総合すると、貸金業者が利息制限法の適用がないことについて悪意である場合には、不当利得に関する悪意が推認されるというべきであって、貸金業者において、法43条1項の要件を、すべて主張・立証できると判断し、かつ、そのように判断するに足りる事情がある場合に、悪意との推認が覆ると解すべきである。
イ そこで、それを本件に当てはめると、被告エイワにおいては、形式的には17条書面、18条書面に該当する書面を各貸付時、各弁済時に原告Aに交付していること、そして、それらの書面の控を保管し、かつ、交付を立証するために原告らからその交付をした証拠としての署名を受け、その立証に備えていたこと、前記認定のとおり、被告エイワにおいて、法43条の適用を否定すべき理由は、借換の際の17条書面、18条書面の記載が不正確なことがあったということのみで、借換時にすべて誤った扱いがされていたものではないことに鑑みると、被告エイワにおいて、不当利得返還請求権が発生した当時、法43条の要件を主張、立証できると判断し、かつ、そのように判断するに足りる事情があったと解すべきである。
ウ そうすると、被告エイワは、善意の受益者というべきであって、原告Aが被告エイワに対して有する不当利得返還請求権元本に対する遅延損害金の起算点は、請求日である訴状送達日の翌日である平成15年2月8日と解すべきである。
(3) 結語
よって、原告Aの、被告エイワに対する請求は、主文第1項の限度で理由がある(なお、訴訟費用については、民事訴訟法64条但書も適用する。)。
2 被告武富士関係
(1) 法43条のみなし弁済の成否
被告武富士は、被告武富士における貸付時一般の取扱や弁済を受ける際一般の取扱を主張、立証するのみであって、原告らに対する各貸付時や原告らの弁済時に、法43条1項の要件を充たしていた旨の具体的事実の主張、立証をせず、また、一般的な取扱から、各貸付時、各弁済時の具体的事実の推認をすることは困難であるから、その余の点について、検討、判断するまでもなく、法43条の適用はない。
(2) 不当利得に関する悪意
ア 前記1(2)アで述べたとおり、貸金業者が利息制限法の適用がないことについて悪意である場合には、不当利得に関する悪意が推認されるというべきであって、貸金業者において、法43条1項の要件を、主張、立証できると判断し、かつ、そのような判断をするに足りる事情がある場合に、初めて、悪意との推認が覆ると解すべきである。
イ そこで、それを本件に当てはめると、後記ウで詳述するように、複数の要件において、被告武富士において、法43条1項の要件を主張、立証できると判断し、かつ、その判断をするに足りる事情があるとはいえないから、悪意との推認を覆すことはできない。
ウ(ア) 17条書面関係
a 丁2ないし4、弁論の全趣旨を総合すると、被告武富士においては、債務者に貸付をする際、まず、包括契約を締結し、その際に債務者と包括契約書面を交わし、個々の貸付の際、個別契約書面を交付する方式を採用していること、被告武富士としては、包括契約書面と個別契約書面を総合して、17条書面と解していたが、その記載事項は、別紙記載事項総括表(1)、(2)のとおりであって、平成9年頃までは、貸金業者が受け取る書面の内容の記載はなかったが、概ね他の要件の記載はあった。
b ここで、債務者に対する個別的な17条書面の交付を立証するに最適な証拠は、債務者との個別取引において交付した包括契約書、個別契約書の控え、ないし、それを作成した際のデータであるが、被告武富士は、本件訴訟において、それらを一切提出していない。更に、原告らに対する最終的な貸付時点である平成13年11月11日は、本訴提起時点の2年足らず前に過ぎない。これらの点を併せ考えると、被告武富士においては、裁判等によって問題となった場合に、すぐに提出できる形で、個別取引において交付した包括契約書、個別契約書の控え、ないし、そのデータを保管していないものと推認できる。
c そうすると、被告武富士においては、債務者に対する個別的な17条書面の交付を立証する意思がない、或いは、一般的な扱いを立証することで、個別的な交付が推認できると解していると窺えるが、その判断は、不合理というべきであって、法定の要件を意識した17条書面の体裁を整えていたとしても、法43条1項の1要件である17条書面の交付の立証ができると判断し、かつそのような判断をするに足りる事情があるとはいえない。
(イ) 18条書面関係
a 原告Bへの最終弁済の時点が平成14年8月2日であるのに、被告武富士において、原告らが弁済した際に交付したとする書面の控え、ないし、そのデータは、一切本件訴訟で提出していない。
そうすると、前記(ア)cと同様に、被告武富士において、法43条1項の1要件である18条書面の交付の立証ができると判断し、かつ、そのような判断をするに足りる事情があるとはいえない。
b また、丁4、6、7、弁論の全趣旨によって、被告武富士が、昭和59年頃以降、債務者が弁済した際、店頭取引やATM取引において交付していると認められる書面には、法18条1項が明示的に定めを要求する「契約年月日」、「貸付の金額」の記載がなく、契約番号の記載があるのみであるところ、債務者にとって、直ちに弁済の対象が明確とならない記載では、法43条1項が18条書面の交付を要求する趣旨に合致するか疑わしいこと、他方、被告武富士において、契約番号を記載する以上、それと併せて契約年月日及び貸付の金額を記載するようなシステムを採用することは容易と思われるのに、その記載をしないことに合理的な理由がないことに鑑みると、被告武富士においては、法43条1項の1要件である、法18条1項の法定の要件を主張、立証できると判断し、また判断するに足りる正当な事情が認められないばかりか、被告武富士には、この点において、法18条1項の法定の要件を、主張、立証する意思自体が乏しかったと窺える。
c なお、被告武富士が、銀行振込による弁済について、領収書ないし計算書を発行していない点については、原告らが、被告武富士に、銀行振込によって弁済したものはない(丁9。丁9の2における原告Bの平成4年9月28日の入金は、同日同額の出金も計上されていること、原告Bが弁済を主張していない時点であることからすると、誤算入を訂正した記載と解される。)ことから、本件における、悪意の判断においては、考慮しないこととする。
(ウ) 任意の支払関係
a 丁5、弁論の全趣旨によると、平成9年東京地裁判決において、それまでの被告武富士に対する債務者のATMを用いての弁済は、弁済前に、それが何に充当されるか債務者において解らないので、法43条1項が要求する任意の支払に該当しない旨の判断がされたこと、それを受け、被告武富士において、ATMの仕様を変更し、事前に充当関係を表示して、弁済者に充当関係を認識して貰う扱いに変更したこと、しかし、被告武富士においては、それ以前のATMにおける弁済も法43条の適用があり、有効であることを前提として、それ以降の弁済を受け取り、また、18条書面を作成していることが認められる。
b 前記aのうちATMの仕様を変更した点のみを捉えると、被告武富士が、任意性の点において、法定の要件を充たす意図はあるとも解される。
しかし、他方、被告武富士において上告しないことによって、下級審において確定した裁判例において、任意性が否定された弁済に関し、法43条を適用して、有効であることを前提とした扱いをすることは、自身がしたATMの仕様の変更と矛盾するものである。
そうすると、被告武富士においては、法43条1項を適用する1要件である、任意性を主張、立証できると判断し、かつ、そのような判断をするに足る事情が認められないばかりか、被告武富士には、任意性を、主張、立証する意思自体が乏しかったと窺える。
エ そうすると、被告武富士は、悪意の受益者というべきであって、原告らが被告武富士に対して有する不当利得返還請求権元本に対する利息は、原告らが主張するとおり、不当利得返還請求権発生の翌日から発生すると解すべきである。
したがって、原告らが、被告武富士に請求できる金員は、原告ら主張のとおりとなる。
(3) 結語
よって、原告らの被告武富士に対する請求は全部理由がある。
3 よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 水野有子)
別紙 (株)エイワ A、(株)武富士 A、(株)武富士 B〈省略〉
取引明細リスト〈省略〉
借換一覧表〈省略〉
記載事項総括表(1)~(5)〈省略〉
別紙(原告平成15年10月8日付第9準備書面添付)〈省略〉
裁判所作成計算書〈省略〉


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