◆ 平成15年12月19日 東京地裁 平15(ワ)2045号
原告 A(以下「原告A」という。)
原告 B(以下「原告B」という。)
同2名訴訟代理人弁護士 ●●
被告 株式会社エイワ(以下「被告エイワ」という。)
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士(口頭弁論終結時) ●●
被告 株式会社武富士(以下「被告武富士」という。)
同代表者代表取締役 D
同訴訟代理人弁護士 ●●
同 ●●
主 文
1 被告エイワは、原告Aに対し、42万2497円及びこれに対する平成15年2月8日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告武富士は、原告Aに対し、87万9131円及び内金82万2233円に対する平成10年3月12日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告武富士は、原告Bに対し、69万5438円及び内金67万4346円に対する平成14年8月3日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告Aの被告エイワに対するその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は、原告Aにおいて生じた費用は、これを5分し、その2を被告エイワ、その3を被告武富士、原告Bにおいて生じた費用は被告武富士、被告エイワにおいて生じた費用は被告エイワ、被告武富士において生じた費用は被告武富士の各負担とする。
6 この判決は、第1項ないし第3項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告エイワは、原告Aに対し、53万6098円及び内金53万2135円に対する平成14年8月3日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
2 主文第2項同旨
3 主文第3項同旨
第2 事案の概要
1 被告らから多数回に亘り金員を借り入れ、多数回に亘り弁済した原告ら(なお、被告エイワから借り入れたのは原告Aのみである。)が、被告らに対し、弁済金を利息制限法に引き直して充当計算すると、過大に弁済した旨主張し、不当利得に基づき金員の返還を求め、更に、被告らは、悪意の受益者である旨主張して、不当利得発生時から民法所定の年5分の割合による利息の支払を請求した事案
被告らは、原告らの弁済は貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)43条にいうみなし弁済として有効であるから、原告らの不当利得返還請求は理由がなく、仮に、一部理由がある部分があっても、不当利得返還請求権が発生した当時、被告らは不当利得であることについて善意であったから、請求日の翌日からの遅延損害金しか発生しないなどと主張して争っている。
2 前提事実
(1) 原告らは、夫婦であって、被告らは、無担保・小口の貸付を主要な業務内容とする、法3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2) 被告らは、原告らに対し、業として、対応する当事者間で、別紙「(株)エイワ A」、別紙「(株)武富士 A」、別紙「(株)武富士 B」記載のとおり貸付を行い、原告らは、被告らに対し、同様に弁済をした。
(3) 被告武富士は、業として債務者に貸し付けた際、債務者が、銀行振込によって弁済した場合には、領収書や計算書を一切発行していない。
3 原告Aと被告エイワ間の争点
(1) 法43条のみなし弁済の成否
ア 被告エイワの主張
(ア) 被告エイワは、原告Aに対し、別紙取引明細リスト各貸付日に、各貸付額の金員を各実質年利の利息で貸し付け、被告は原告Aから同リストの各取引日に各取引金額の弁済を受け、これを各利息充当欄記載の利息及び各元金充当欄記載の元金に充当した。
(イ) 法17条の規定による法定の契約書面(以下「17条書面」という。)の交付
a 被告エイワは、(ア)の貸付をする都度、借用証書、法省令(以下「省令」という。)16条3項に基づく書面の写し、借用証書(控)の3部複写の書類(乙1)を作成し、原告Aに、借用証書(控)を交付した。
このことは、被告エイワが保管している省令16条3項に基づく書面の写の受領者欄に原告Aが署名していることから明らかである(乙2ないし19)。
b 被告エイワが各貸付に際し、原告Aに交付した借用証書(控)は、法17条1項によって要求されている内容を満たす。
c なお、原告Aが主張する借換の点については、別紙借換一覧表〈1〉ないし〈3〉、〈10〉、〈12〉、〈15〉、〈16〉については、原告が借換前の利息を持参して弁済し、その後、新たに借り換えた金額の交付を受けたことは、領収書兼残高確認書の欄外即ち、例えば乙27に、「95,584」との記載があること、入金を取り扱い、乙26を作成した担当者と、借換を処理し、乙27、28を作成した担当者が異なることから明らかである。
d その外の借換時には、原告Aの所持金からでなく、新規貸付金の一部をもって相殺している。したがって、事実関係については、原告Aの指摘するとおりである。
しかし、この処理は、借換後に旧債務の利息を残しておくと、その利息を元本に組み入れてしまう危険があるが、その危険を避けるための処理であり、債務者が所持金から弁済できない、やむを得ない場合に行うものであるが、その処理は、原告Aにとって特に不利益となるものではない。
(ウ) 法18条の規定による法定の受取証書(以下「18条書面」という。)の交付
a 被告エイワは、原告Aから貸金の返済を受けると同時に、原告Aに対し、領収書兼残高確認書を交付している(乙20ないし183)。
同書面は2通複写で作成され、前記書証は、被告エイワが保管していた控えである。
b この領収書兼残高確認書は、法18条によって要求されている内容を満たす。
c 借換に際しての主張は、(イ)c、dのとおり。
(エ) 任意性
原告Aは、各支払と同時に領収書兼残高確認書の交付を受け、その記載内容から支払金が利息及び元金にどのように充当されるかを知ることができた。
それにもかかわらず、原告Aは、何らの異議を主張することなく、被告の八王子支店に来店して、支払を継続してきたのであるから、任意に約定利息を支払ったものであることが明らかである。
イ 原告の主張
(ア) 借換に関する主張(17条書面、18条書面について)
a 被告エイワは、初回取引及び平成9年8月18日貸付を除く全部の貸付に際し、新たに貸付をするのと同時に従来の貸付残高をゼロとし、新たな貸付高から旧貸付高を差し引いた残高のみを交付し、借換を行った。
一般に、借換に際しては、旧残債務の内容と借換の事実を特定する必要があり(法17条1項9号、法施行規則13条1項1号カ)、反対に、具体的・正確にこれら内容・事実が記載されない場合、適法な17条書面の交付があったとはいえないから「みなし弁済」の適用の余地はない(大阪地判平2.1.19判タ738.160)。
また、借換は、従来の貸付債務の消滅を伴うから、貸金業者は18条書面を発行する義務があるが、この18条書面も実体的な契約関係を反映する正確な記載がされていなければならない(東京高判平14.7.24公刊物未登載)。
以上を前提に、被告エイワが作成し、原告Aに発行した借用証書(控)、領収書兼残高確認書を見ると、借換に際し、原告Aが利息を現実に返済してから借換を行ったかのように記載しているが、実際には、そのようなことは一切なく、旧貸付金の元利金と新貸付金の差額金を原告Aに交付する扱いがされている。
具体的には、別紙借換一覧表のとおり、現実と齟齬した記載が行われている。
このように、借換時に受領した契約書・計算書の記載が実体を反映せず、特に実質金利の記載(法17条1項9号、法施行規則13条2項、11条3項)に実体との齟齬があるから、法43条の適用はないと解すべきである。
b(a) 被告エイワは、別紙借換一覧表〈4〉ないし〈9〉、〈11〉、〈13〉、〈14〉の各借換は、旧貸付金の元利金と新貸付金の差額金を原告Aに手交する扱いがされていたことを認める一方、〈1〉ないし〈3〉、〈10〉、〈12〉、〈15〉、〈16〉の各借換は、原告Aの所持金の中から若干の返済をさせ、利息をゼロにしてから借換(旧貸付元本と新貸付元本の差額金の貸付金を実際にも交付)したとのことである。
(b) そうすると、別紙借換一覧表〈4〉ないし〈9〉、〈11〉、〈13〉、〈14〉の各借換に際して作成された借用証書、領収書兼残高確認書は、正確な受領金額、実質金利が記載されていないから法17条、18条各1項の要件を充足していないことになり、法43条の適用の余地はない。
(c) また、別紙借換一覧表〈4〉ないし〈9〉、〈11〉、〈13〉、〈14〉の各借換では、要するに旧貸金の利息が新貸金の元本に組み入れられたものであるから、被告エイワは、原告Aから出資法5条2項所定の刑罰金利を超える利息を徴収したことになるから、法43条の適用は除外される。
(d) 次に、別紙借換一覧表〈10〉、〈12〉、〈15〉、〈16〉の各借換に際しては、別紙借換一覧表〈4〉ないし〈9〉、〈11〉、〈13〉、〈14〉の各借換について法43条の適用があることを前提とした、即ち、実体関係を反映していない借用証書(控)、領収書兼残高確認書が交付されているから、みなし弁済の適用はない。
(e) 問題は、別紙借換一覧表〈1〉ないし〈3〉の借換であるが、被告エイワが、この時点で作成された借用証書(控)、領収書兼残高確認書の記載内容と合致した金銭の移動があったと主張する根拠は、乙27の欄外に95,584の記載があること、乙26の作成者と乙27、28の作成担当者が異なっていることのみであるから、根拠足り得ない。
(イ) 17条書面の交付先について
a 原告Aは、被告エイワに対する返済に際して、妻である原告Bに持参して貰うことがあった。被告エイワは、その弁済を受領する際に、原告Bに領収書兼残高確認書(乙22、24、32、33、39、45ないし48、50ないし52、57、59ないし61、66、67、69、84ないし86、88、90ないし93、95ないし100、104、110、131ないし136)を交付し、原告Aに17条書面の交付をしなかった。
原告Aは、原告Bに領収書兼残高確認書の受領権限を与えていない。
b 原告Aは、自分で被告エイワに返済する際に、領収書兼残高確認書の交付を受けないときがあった。被告エイワの証拠提出する領収書兼残高確認書の一部(乙21、44、58、87、101、112、123、145、162、163、170、171)については、原告Aが受領したものではない。
(ウ) 被告エイワの原告らの支払に任意性があるとの主張は争う。
領収書兼残高確認書は原告Aから金銭を受領した後に作成、発行されたものであるから、原告Aは、支払った金銭のうち、いくらが元本に、いくらが利息にそれぞれ充当されたかの認識がないから、利息として任意に支払ったとはいえない。
(2) 不当利得に関する悪意
ア 原告の主張
被告エイワは、原告Aに不当利得返還請求権が発生した時点から、その発生について悪意であった。
イ 被告エイワの主張
争う。


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投稿: madhands | 2010年1 月31日 (日) (00:56)