◆ 平成15年11月10日 東京地裁 平15(ワ)9891号
原告 ●●
訴訟代理人弁護士 ●●
被告 株式会社ライフ
代表者代表取締役 ●●
訴訟代理人弁護士 ●●
主 文
1 被告は、原告に対し、36万1178円及びこれに対する平成15年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は、原告に対し、182万2481円及びこれに対する平成15年5月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 争いのない事実及び掲記の証拠によって容易に認められる事実
(1) 被告は、消費者を対象にした無担保・小口の貸付を主要な業務内容とする貸金業者であり、原告は、被告から借入れをした一般消費者である。
(2) 原告は、被告との間で、原告を借主、被告を貸主として、別紙計算書の「年月日」、「借入金」及び「返済金」の各欄記載のとおり、長期間にわたる継続的な金銭消費貸借契約を行い、単純に、利息制限法に基づく、引き直し計算をした残元金は、同計算書の「残元金」欄記載のとおり(-は過払金)となる。
(3)ア 被告は、平成12年5月19日、東京地方裁判所に会社更生手続開始を申し立て(平成12年(ミ)第13号)、同年6月30日、更生手続開始決定を受けた(乙2)。
イ 被告は、平成13年1月31日、更正計画認可決定を受けた(以下「本件認可決定」という。)(乙4)。
ウ 原告主張の不当利得返還請求権に基づく過払金返還請求債権のうち、平成12年6月30日以前に入金された金員についての過払金返還請求債権146万1303円(以下「本件債権」という。)は、被告の更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であるから更生債権であるところ、原告は、これにつき届出期間内(平成12年8月15日)までに債権届出をしなかった。
エ 平成12年7月1日から平成15年3月14日までの原告の被告に対する入金額は合計36万1178円である。
2 争点
原告の請求する過払金返還請求債権のうち、被告に対する更生債権となる本件債権は、本件認可決定により、免責されるか否か。
第3 争点に対する判断
1 原告は、本件債権につき、〈1〉平成14年法律第154号による改正前の会社更生法(以下「法」という。)241条ただし書(使用人等の退職手当請求権)の類推適用があって免責されるか、又は、〈2〉法47条2項による通知がなされておらず、さらに、他に過払金返還請求債権の届出がなされていることから、同種の届出を促すことが可能であった原告に対して、法241条本文による失権効を主張するのは、信義則に反して許されない旨主張する。
(1) 法241条ただし書の類推適用について
法241条本文は、「更正計画認可の決定があったときは、計画の定又はこの法律の規定によって認められた権利を除き、会社は、すべての更生債権及び更生担保権につきその責を免れ」ると規定している。そして、そのただし書において、更生手続開始後に会社の使用人等であった者のうち、更正計画認可の決定後も引き続き会社の使用人等として在職しているものにつき、その退職手当請求権が更正計画認可決定による免責の対象とならない旨を明らかにしているが、これは、使用人等の退職手当請求権については、退職後にその届出をすべきものとされていることから(法127条の2)、更生手続開始後更生会社の使用人等であった者で更生計画認可後も引き続き更生会社に在職しているものは、その退職手当の請求権の届出をして更生手続に参加する機会をもち得ないからである。
一方、本件債権は、あくまでも不当利得返還請求権であり、被告の更生手続開始決定につき公告がされている以上(弁論の全趣旨)、原告がその内容を実際に知らなかったとしても、更生手続の画一的、確定的処理の必要性にもかんがみると、債権届出の機会は与えられているというべきものであって(甲9ないし15(枝番を含む。)によれば、主要各紙において被告の更生手続申請が大々的に報道され、更生手続開始決定がなされたことについても扱いは大きくないものの報道されたことが認められる。)、上記退職手当請求権とは状況を異にしているといわざるを得ない。
したがって、本件債権については、法241条の類推適用を考慮すべき基礎を欠き、原告が所定の期間内に債権届出をしなかった以上は、免責されるというべきである。また、このように解しないと、原告と同様の過払金返還請求権について、現実に債権届出をした者が存在し、約54.298パーセントの弁済率で取り扱われたところ(乙5の1及び5の2、6の1及び6の2)、このような者との均衡上も大いに問題が生じることになってしまう。
なお、更生計画認可決定後にその損害が顕在化した不法行為債権につき法241条ただし書の類推適用を肯定すべきかは、検討すべき点が多々あるところ、これをおくとしても、本件債権は、通常の継続的取引の過程で生じた不当利得返還請求権であって、被告による違法性をうかがわせる事情も認められず、およそ認可前に届出をすることができないものとして、上記不法行為債権と同列に扱うことはできないというべきである。
(2) 信義則違反について
原告は、当然に過払金の不当利得返還請求権が生じることを前提として、法47条2項の債権者への通知が必要である旨主張する。
しかしながら、被告は、元来、貸金業の規制等に関する法律43条に規定するいわゆる「みなし弁済」を前提として、過払金は基本的に存在しないとの立場をとっており、被告が個別事例に応じてみなし弁済の要件具備や立証の難易等を勘案した上、「みなし弁済」の主張をするか否かは、その選択に係るものであるから、原告に対し、法47条2項の通知をしなければならないとの義務を負うわけではない。
また、本件債権のような過払金返還請求権を行使するか否かは、専らその債権者の意思にゆだねられているものというべきものであることも勘案すれば、前記のとおり、同種の過払金返還請求権についての債権届出があるからといって、上記判断が左右されるものではないし、原告に対して、債権届出を促す義務を生ぜしめるものでもない。
したがって、被告が本件債権の免責を主張することにつき、信義則違反も認められない。
2 結論
以上によれば、原告の本件債権は免責されているといわざるを得ないので、原告の本訴請求は、被告が免責を受けた日の翌日である平成12年7月1日から平成15年3月14日までの原告の被告に対する入金額合計36万1178円及びこれに対する訴状送達の日であることが記録上明らかな平成15年5月24日から支払済みまで民法所定年5分の割合の金員の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求を棄却することとする。
(裁判官 大門匡)
(別紙)計算書〈省略〉


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